上杉連合に潜入した武蔵達を待つものは!?「オリエント」読んでみた!!!

第43話 黒の会合 (初出:週刊少年マガジン2019年21・22号)
とある武士団の城下町で、七緒は四郎を含む7人と黒曜の女神についての会議に参加していた。そして、東の「播磨国」を目指していた武蔵達は、遭難中に緑色鬼の蛸壺鬼に襲われる。

第44話 もう一人いる (初出:週刊少年マガジン2019年23号)
焔魔の大太刀を既に手に入れた武蔵は、軽々とそれを使いこなし蛸壺鬼を倒す。その後、小次郎とつぐみの他に捕まっている人間が居る事に気付いていた彼は、鬼の死骸から女を見つける。

第45話 壁 (初出:週刊少年マガジン2019年24号)
武蔵が助けた女の武士、猿渡みちるが所有する鬼鉄騎は、上杉連合の武士達が集う播磨の港に向かっていた。道中でみちるの事が気になる武蔵は、彼女と仲良くなろうと話しかけるが・・・。

第46話 はじまりの鬼神 (初出:週刊少年マガジン2019年25号)
巨大な黒い壁のようなものを目撃した武蔵。みちるによると、それは150年前日ノ本で最初に現れられた鬼神、「黒鬼神」であると言う。

第47話 紫龍城 (初出:週刊少年マガジン2019年26号)
自斎の過去を調べる為に上杉のお殿様に会おうとする武蔵達だが、早速怪しまれてしまう。彼等が完全に取り押さえられそうになった所で、空から現れた鬼鉄騎から姿を現したのは、なんと尚虎だった。

第48話 上杉武士団 (初出:週刊少年マガジン2019年27号)
上杉武士団の鬼鉄騎に乗ってきた尚虎は、貴賓として播磨の港を訪れたようである。彼の口利きにより武蔵達は嫌疑を逃れるが、上杉のお殿様には会えずじまいの状況は変わらない。

第49話 淡路に巣食う鬼 (初出:週刊少年マガジン2019年28号)
上杉武士団の団長、上杉竜臣は尚虎に淡路島の鬼神を倒す為の協力要請を出していた。その頃、淡路島に巣食う緑色鬼神「砲戦竜八岐大蛇」の傍にて、犬田八咫郎が四郎の手引きにより出現する。

第50話 刺青男 (初出:週刊少年マガジン2019年29号)
つぐみの協力により上杉武士団の城内に侵入した武蔵は、其処で仙人のような雰囲気を感じさせる男に出会う。その男こそ彼等が探している上杉竜臣その人だったが、部下の進言により部外者である事がばれてしまう。

第51話 タコ部屋 (初出:週刊少年マガジン2019年30号)
当初は罪人として強制労働を強いられた武蔵達だったが、辛くも欠員補充として上杉軍に参加する事が許される。そのうえ、武蔵は小次郎とつぐみとは違う小隊に入らされてしまう。

第52話 三すくみ (初出:週刊少年マガジン2019年32号)
小隊長の座を巡り尼子勝巳と島津秋弘が決闘を始めようとしていた。険悪な雰囲気の漂う隊の中で、武蔵はみちると再会する。

「オリエント」も既に第6巻を迎えたが、本編はここから大きな長編を迎える運びになっている。今巻はその導入部分であり、今迄以上に登場人物が増えたり鬼神やそれに関わる敵の動きも活発化していく。

まず第43話では、犬飼四郎達が所属している謎の武士団の中心メンバー達の存在が、一部ながら浮き彫りになる。全部で8人居るとされる彼等は、自身の身体に埋め込まれている黒い鉱石で繋がっていて、何時如何なる時でもお互いの事を認知出来るようである。

そして、彼等の行動原理にはやはり鬼神や黒曜の女神が中心に置かれており、黒曜の女神を奪還する事もその一環であるらしい。第7話で最初に明示された「神器」を手に入れる手掛かりとして黒曜の女神が必要とされているのも、これからの展開を占う上で重要な情報と言える。

今回、武蔵達は自斎が上杉武士団と関係があったのかを調べる為に、彼等を率いる上杉竜臣に会おうと画策するのが、第6巻での話の骨子である。これまでも自斎には、息子である小次郎も知らないような秘密を持っているような節があったが、彼が持っていた鬼神に関する巻物に上杉の署名が入っているという事実が明らかになった事で、その核心に迫る手掛かりを武蔵達は掴んだ。

しかし、彼等はそれに近づいていく過程で、武士団という世界の洗礼を浴びてしまう。今巻で初登場する上杉竜臣は、まさしく伝統的な武士団の在るべき姿を体現するような男である。

彼は武田尚虎と肩を並べる実力を持つ「五傑将」の1人であり、何よりも「血の繋がり」や「家族」を大事にしている武士である。それらを尊ぶ事自体は武士団の当たり前ではあるが、竜臣が執り行う合戦前の、過去の英霊に対する戦勝祈願は、尚虎が圧倒されるほどの規模とされている。そういう意味では、彼の率いる武士団は一番、武士として正しき振る舞いや活動を重んじていると捉えられる。

また、直接的な繋がりは無くとも同盟としての契りを交わした「上杉連合」下の武士団ならば、竜臣は家族同然の扱いをする鷹揚さはあるものの、武蔵が外部の人間だと知った途端に冷酷な態度を前面に出すように、余所者を徹底的に排除しようとするきらいがある。その無慈悲さは、武蔵と小次郎をタコ部屋送りにし、つぐみを他の罪人の性奴隷に仕立てる辺りからも伺い知れる。そんな保守的な考えで武士団を率いる竜臣も、尚虎には一目置いているらしく、淡路島の鬼神退治でわざわざ彼に助力を求めたのには、相応の理由がありそうである。

尚虎は第7話以来の登場になるが、武蔵達を庇ったりと直接自分達の得にはならない筈の事をする辺りに、竜臣との考え方の違いが見て取れる。それはただの同情だけでなく、彼なりに武蔵達に武士としての伸びしろを感じているからだろうか。武士団の伝統に殉ずる竜臣とは違う、他者を受け入れる寛容さを持つ所に彼の五傑将たる強さや魅力がありそうである。

武士団というものが、元々血の繋がり深い者達による集いならば、武蔵達で結成された「鐘巻武士団」はその概念から外れた異質なものとみなす事が出来る。これまでに出てきた「小雨田武士団」や四郎と七緒が居る武士団も、「家族」や「兄弟」といった言葉を使い、自分達を繋がりの深い者同士の集まりとして扱っていた。

それに対して、武蔵達は基本的に血の繋がりの無い者同士の集まりである。特に武蔵は早くに両親を亡くしている為か、血族による絆に若干疎い側面を持っている。小次郎も自斎という武士の親が居たとは言え、まだ自分の中にある武士の誇りや、それにまつわる因果を知らない。彼等の間にある絆は、強いて言うなら共に戦い培われ始めた「仲間」というものかもしれない。いずれにせよ、鐘巻武士団は他の武士団にはない強い繋がりを必要とする時が現れそうである。

そして、これからも武蔵達は自分達と同じような年端の武士達に遭遇する事になる。自分達と異なる境遇と様々な目的を持った彼等を前に、武蔵達はどのようにぶつかりながら成長していくのだろうか。

追記

マガジン連載当時、本編の最後に予告されたサブタイトルのうち、実際には変更されたものがいくつか存在する。変更される前の謂わば仮タイトル扱いとなったものを此処に纏めておく。

第43話 黒い会合
第44話 健全な心
第45話 東の果てに
第46話 黒い壁
第47話 播磨の港
第48話 武田と上杉
第50話 最強の盾
第51話 地獄
第52話 三竦み

タイトルとURLをコピーしました