第14話 共闘 (初出:週刊少年マガジン2018年40号)
正門の前の広場には、何も知らない領民が集められていた。小雨田の兵士達が出入り口を固めている中で、武蔵達は彼等を逃がす為の作戦を実行する。
第15話 見えない檻 (初出:週刊少年マガジン2018年41号)
なかなか城から逃げようとしない人々の心を動かす為に、自ら英雄に立ち向かおうとするつぐみ。彼女の勇気と決意に呼応するように、鬼鉄刀は輝きを放つ。
第16話 明日を選ぶ (初出:週刊少年マガジン2018年42号)
英雄との戦いが益々激化する中で、つぐみは自分が本当に怖がっていたのはその先にある未来である事に気付く。彼女の戦いは英雄に縛られた人々の心を動かそうとしていた。
第17話 もっと強く (初出:週刊少年マガジン2018年43号)
木霊の大群は過ぎ去り城は壊されたが、英雄の圧政は無くなり平穏が訪れた。そして、つぐみを守れなかった事を後悔している城の人々は、武蔵と小次郎に彼女を旅に連れて行ってやって欲しいと頼みこむ。
第18話 三つ巴 (初出:週刊少年マガジン2018年44号)
つぐみを加えて3人で旅をするようになった武蔵達だが、何故か彼女の不可解な行動のせいで早速人間関係がこじれそうになっていた。武蔵と小次郎はお互いの誤解を解こうと思っていても、その為に自分の秘密を明かす事に関しては躊躇していて・・・。
第19話 刀 (初出:週刊少年マガジン2018年45号)
野良鬼が出没する一帯で寝ずの番をしていた武蔵は、単体の木霊鬼に小次郎の刀を奪われてしまう。彼は弱点である野良鬼の角を折ろうとするが、何故か上手くいかない。やがて野良鬼が立ち止まった場所には、地面に刺さった大量の刀とその中心で佇む黒いフードの男が居た。
第20話 名もなき犬 (初出:週刊少年マガジン2018年46号)
小次郎の刀を取り戻す事に成功した武蔵だったが、彼に刀を貸してくれた男達は突如として姿を消す。そして、武蔵は鬼神を倒せる力を持つ鬼鉄刀に強い興味を抱き始める。
第21話 鐘巻武士団 (初出:週刊少年マガジン2018年47号)
鬼鉄刀の競りが行われる迄の間、空腹を満たそうと酒場に寄った武蔵達。其処でつぐみは、武蔵と小次郎にどっちが団長か決めてくれと言う。彼女からの問いに対して言葉を濁す小次郎とは対照的に、武蔵はあっさりと彼を団長に指名する。
第22話 刀の試し (初出:週刊少年マガジン2018年48号)
愈々始まった鬼鉄刀の競りで、武蔵と小次郎は「刀の試し」を受ける。鬼鉄刀を握った武蔵の目に飛び込んできたものは・・・。
城の領民を助ける為に小雨田英雄への反撃を行うつぐみの戦いや、鬼鉄刀を巡る話が描かれるオリエント第3巻、ようやく序章が終わり武蔵達の鬼神退治へ向けて1歩踏み出したようである。主役級の登場人物が3人揃った事で、一層物語の芯が強くなったように思われる。
第14~16話にかけてはつぐみを筆頭に、英雄から領民を開放して鬼の群れから救おうとする場面が描かれている。英雄の呪縛に囚われているのは彼女だけでなく人々も同様であり、一時的に周囲の兵士を倒しても彼等がその場から動く事は出来なかった。そんな彼等の苦しみをよく知っているつぐみは、英雄と真正面から戦うことで彼等の心を変えようとする。英雄と戦う姿を見せながら人々を説得するつぐみの姿は、本巻における大きい見所の1つである。
小雨田英雄は普段は柔和な笑顔を見せる優男のようであるが、裏では暴力的な一面を覗かせる男である。武士として鬼退治をする事に強いこだわりを見せているものの、武士団としての戦力が大幅に弱体化している現状やわざわざ領民を戦いに巻き込もうとする辺り、武田尚虎ほどのカリスマ性や実力は持っていないと思われる。
武士団は家族であり自身は彼等を引っ張る父親であるという考えを強く持つあまり、特に服部姉妹に対しては強く叱責し束縛するような振舞いをしていた。実質彼等の親代わりをしていたという自負もあり、つぐみの反抗に対してはあたかもしつけのように彼女をねじ伏せようとした。しかし、逆につぐみに倒されてしまったショックの為か意気消沈してしまい、再起不能な状態に陥るが彼女に対する執着だけは残っているようである。
つぐみも英雄を倒したとは言え、彼に対する精神的な束縛を完全に乗り越えられたと思っている訳ではなく、自身と町の人々の為にもっと強くなる事を決意して武蔵達と旅をする選択をする。横暴な態度を取られたりや厳しい言葉を投げつけれられても、親代わりとしての恩を無視出来ない彼女の心情は複雑で生々しいものを感じる。長い間傷ついた精神は簡単に戻らずとも、強くなると決意したつぐみの新たな人生が始まった事には変わりないのである。
第18話は本編の間を一拍置いた箸休め的な話である。「マギ」の時もそうだったが大高忍は、時々本編の間に定期的にこういうタイプの話を挿入する事がある。しかも、そういう時に限って登場人物達にもっともらしいモノローグを入れさせてから、くだらない雰囲気の話に導入させるのである。此処では武蔵の年上好きや小次郎の女性経験の無さと言った、彼等の年頃っぽい秘密が明かされる。
第19話以降では鬼神を倒す重要な武器である鬼鉄刀にまつわる話やこれまで触れられる事の無かった武蔵の過去に関する話題が出てくる。個人的には第3巻までに至る本編の進み具合は少し冗長であると感じた。単行本ベースで読み進めるとそれなりにまとまりを感じたが、連載当時だとより進展具合が遅めだったと思う。
しかし、主人公組が揃い愈々鬼神退治に向けて本格的に動き始めた事で、本編の盛り上がり具合も更に高まっていく。第19話と第20話で登場した謎の2人組の存在も気になる所だが、武蔵の「刀の試し」では異様な雰囲気を感じさせる何かが現れる。武蔵は一体何者なのか、これからの展開に益々期待せざるを得ない。
追記
マガジン連載当時、本編の最後に予告されたサブタイトルのうち、実際には変更されたものがいくつか存在する。変更される前の謂わば仮タイトル扱いとなったものを此処に纏めておく。
第15話 鎖
第16話 それがどうした
第19話 鬼鉄刀
第21話 競り
第22話 閻魔大太刀