第1話 危険な男 (初出:ゲッサン2018年2月号)
くノ一で構成されているあかね組の内の1人、ツバキは夜中に脱走したサザンカとアサガオを連れ戻そうと、夜の森を駆けて行く。
第2話 見てはならない (初出:ゲッサン2018年3月号)
翌日、まだ知らぬ男に焦がれる夢を見て寝坊するツバキ。しかし、朝食の席でアサガオは男の姿を見たと言い始めて・・・。
第3話 男火照り (初出:ゲッサン2018年4月号)
男が気になるツバキは授業中でもその事を考えてしまい、先生に注意されてしまう。しかも、それは彼女の忍術にも影響を及ぼしていた。
第4話 姉さまと脱出計画 (初出:ゲッサン2018年5月号)
ツバキにかまってもらえない不満を貯めていたサザンカは、アサガオを利用して授業を抜け出し彼女に会おうとする。
第5話 仲良し対決 (初出:ゲッサン2018年6月号)
よくケンカするサザンカとアサガオを見かねたツバキは、巳組のウイキョウとキキョウから巻物の奪取を命じて、チームワークを鍛えさせようとする。
第6話 努力と天才 (初出:ゲッサン2018年7月号)
班対抗実戦でツバキの戌班とベニスモモの未班が戦う事になった。そこで作戦を練っていたツバキ達の前に未班のトウワタが現れて、あるお願いをする。
山本崇一朗の連載4本目にあたる「くノ一ツバキの胸の内」は、ゲッサンで「からかい上手の高木さん」と同時連載されている作品である。本作はこれまでの山本崇一朗の作品とは、一線を画した特徴が見られる。
まず、本作ではこれまでの作者の十八番と言っても良かったラブコメが封印されている。基本的に男性キャラクターが出てくる事はなく、登場人物の会話の中で「男」という単語が使われるぐらいである。ストーリーの都合上、男性キャラクターを簡単に出せないという制約の上でこの作品は創られているので、ある意味で作者の挑戦的な取り組みと言える。
その代わりに本作にはくノ一、つまり女性キャラクターが沢山登場する。山本崇一朗のTwitterを見ている人間なら周知の事実だが、月刊誌と週刊誌の同時連載というハードスケジュールながら、その間でもオリジナルや二次を問わず様々な女子の絵を描いて投稿している。くノ一という縛りはあれど、多様なビジュアルの女の子を出せる本作は、山本崇一朗にとって自身の絵の引き出しの多さを披露出来るのである。
本作の舞台はとある忍者養成の里であり、其処で修業に励むくノ一達は皆あかね組という集団に属している。男の忍者もあおい組として別の場所で修業しているらしいが、ツバキ達は彼等との交流を禁じられており、男は危険であり近づいてはいけない存在として教えられている。しかし、彼女達の中には男を倒そうとしたり、その姿を見てみたいと興味を持っている者も多い。主人公であるツバキもその1人だが、彼女の場合はもっと純粋で寧ろ憧れめいた感情を抱いている。しかし、それを周囲に漏らす訳にはいかず、悶々とした日々を送っている。
あかね組はその中でも少人数の班が沢山あり、第1巻だけでも3組が確認出来る。年上年下分け隔てなく振り分けられている他、班によっては特殊な技能に秀でた所もあるようである。班の名前は干支に基づいていて、本作に登場するくノ一の名前は全員花の名前が由来になっている。
戌(イヌ)班
ツバキ
本作の主人公で戌班のリーダーである。くノ一として優秀な成績を収めており、先生からの信頼も厚い。男に特別な感情を持っている。
サザンカ
ツバキよりも年下のくノ一である。彼女を「お姉さま」と呼び慕っている一方で、彼女を困らせたりと問題児な一面を持っている。
アサガオ
ツバキをちゃん付けしてはいるが、年齢は彼女の方が下である。食欲旺盛で忍術はあまり得意ではないが、力は強い。サザンカと一緒に問題児扱いされている。
巴(ヘビ)班
ウイキョウとキキョウ
双子のくノ一であり、いつも一緒に行動している程に仲が良い。
未(ヒツジ)班
ベニスモモ
未班のリーダーであり、ツバキに匹敵する実力を持つくノ一である。常に余裕を見せているが、陰ながら鍛錬を怠らない努力家である。
ミズバショウ
眼鏡をかけたくノ一で、本好きである。罠をしかける事に定評がある。
トウワタ
未班唯一の年下くノ一であり、努力をモットーにしている。
他のくノ一とは違う感情を男に抱くツバキ、そして彼女を取り巻く個性豊かなくノ一達が描かれる本作は第2巻以降でも、忍者でありながらも同時に年頃の女子めいた面を魅せるストーリーが沢山登場する。「からかい上手の高木さん」とは一味違う新たな山本崇一朗の才能が楽しめる本作にこれからも期待したい。