吸血鬼に会いたいならメイド喫茶に行け!?「よふかしのうた」読んでみた!!!

第30夜:あっくんと呼んでくれ (初出:週刊少年サンデー2020年17号)
再びメンヘラさんに会ったコウは、彼の変貌に思わす驚く。その後、彼はナズナに会うがその首元はメンヘラさんの忠告もあり隠されていて・・・。

第31夜:都合良くモテない知り合い (初出:週刊少年サンデー2020年18号)
ナズナは小繁縷ミドリから頼まれて、彼女がバイトしているメイド喫茶を手伝う事になる。コウが初めて体験するメイド喫茶の雰囲気に圧倒される中で、盗撮事件が発生する。

第32夜:盗撮画像を拡大して見る (初出:週刊少年サンデー2020年19号)
盗撮事件の犯人を見つける為の手がかりを探すコウとナズナ。犯人が盗撮したと思われるベランダから、実際に撮影してみたコウは解決の糸口を見つける。

第33夜:運が良ければわかるかも (初出:週刊少年サンデー2020年20号)
盗撮犯を現行犯で捕まえようと待ち伏せするコウ達は、遂にその現場に出くわす。犯人の正体とその以外な動機とは・・・。

第34夜:最低だろうか (初出:週刊少年サンデー2020年21号)
コウが不登校になる前、アキラは浅倉さくらに「ある相談」をされていた。

第35夜:この先生が苦手だった (初出:週刊少年サンデー2020年22・23号)
夜の公園で、コウは担任の澤先生に見つかってしまう。一旦はその場から逃げようとした彼だったが、その場で吐いてしまった先生をほうってはおけず、共にベンチで過ごす事になる。

第36夜:わははは飲酒運転だ~!(初出:週刊少年サンデー2020年26号)
お金を稼ぐ事に新たな意欲を見せたナズナにより、コウは彼女が経営している添い寝屋への客引きを行う。その道中に彼は歩道橋上で、探偵の鶯アンコに出会う。

第37夜:暗くて見えない (初出:週刊少年サンデー2020年27・28号)
コウとマヒル、それにアキラの3人は夜の学校で七不思議の伝説を検証する遊びを行う。全ての七不思議がガセである事を確かめた彼等だが、マヒルはもう1つの噂が残っていると言う。最後の1つを確かめようと件の教室に向かった3人は其処で・・・。

第38夜:吸血鬼って知ってるかい?(初出:週刊少年サンデー2020年29号)
噂通り夜の教室で、コウ達は失踪したと思われる男性教師に出くわしてしまう。ただならぬ気配を漂わせる彼は突如、3人のうちのアキラに襲い掛かる。

第39夜:あなたは人のまま死ぬ (初出:週刊少年サンデー2020年30号)
コウ達3人の目の前に現れた探偵、アンコは何らかの手段を用いて吸血鬼になってしまった男性教師を殺してしまう。アンコの行動に納得出来ず詰問するコウだったが、逆に彼女から「君は吸血鬼を何も知らない」と反論される。

第35.5夜:閑話休題 (初出:週刊少年サンデー2020年24号)
コウは久しぶりに、添い寝屋の顔を持つナズナからマッサージを受ける。

よふかしのうた第4巻の展開として、普段はメイド喫茶で働いている吸血鬼「小繁縷ミドリ」を交えた話や吸血鬼を忌まわしく思っている探偵「鶯アンコ」の登場が主に挙げられる。最初の頃に比べて本編も長編を占める割合が増えており、ストーリーが進むテンポも随分安定してきたようである。

今巻ではセリに続いてミドリという吸血鬼が、第31~33夜において連続して登場する。まだ名前と姿しか明らかになっていない吸血鬼達も、今後の展開において1人ずつ詳細が分かるようになっていく運びとなっている事が予測出来る。

ミドリは高校生っぽい服装をしているセリと比べ、どちらかと言えば大学生や専門学校生に違い雰囲気と容姿である。見た目こそ派手ではないものの、第21夜において最終的にコウが好きになるのは自分だと豪語しニコに対して挑発的な物言いをしたりと、恋愛事に対してかなり好戦的で自身の魅力にかなりの自信を持っている。それだけに、自分に対して脈ナシと初めて言ったコウに強い対抗意識を抱いている。

盗撮事件の真相を明らかにする為にコウとミドリが一緒のロッカーに入らざるを得ず、其処で彼が思わず勃起してしまう場面が間接的に描かれている。かなり遠回しに描写されていて筆者も何回か読み直してやっと気付いたのだが、今の少年サンデーだとそれでも冒険している方なのだろう。思えばサンデーでも、一昔前はかなり刺激的な場面や成年向けのネタが散見されていたが、今日では随分そういうものも鳴りを潜めている事に今更ながら気付かされた。

メイド喫茶で起きた盗撮事件の裏にあったのは、承認欲求というイマドキと言うべき動機である。実際の所、人間のやる事の正常と病気の境目というものはかなり曖昧なものなのかもしれない。少なくとも吸血鬼という人間の理から外れた存在からすれば、そんなものは些末な事象なのだろう。

第35夜は個人的には割と好きなエピソードである。夜の公園という「先生と生徒の関係」に縛られない時間と場所で、コウとその担任が腹を割って話すという話は、「よふかしのうた」で元々提示されていた、夜だから味わえる自由さや身の回りの見え方等を踏襲するものに仕上がっている。

現役の生徒にとってはいつだって先生というものは、どちらかと言えば面倒な存在である。だが、時間が経ち成人して、時に逆の立場になったらやっと分かる事は往々にして在る。大人と子供という年齢の差はあれ同じ人間である以上、簡単に分かり合えないのは仕方のない事なのかもしれない。しかし、夜はその遠く感じる距離というものを少しだけ近づけさせてくれる。コウにとって澤先生が担任なのは、彼の不登校生活の中で本当の意味で恵まれているうちの1つである。

これまで吸血鬼であるナズナの導きにより、コウは夜というものを楽しく感じられるようになっていた。しかし、それは間違いであると言わんばかりに探偵である鶯アンコの登場が、物語に暗雲をもたらし始める。彼女は吸血鬼を殺す方法を知っている人間であり、これまでの言動から吸血鬼の存在を認めるつもりが無いのは明白である。つまり、これからナズナを始め吸血鬼達と敵対する事になる上、吸血鬼になりたいと思っているコウからすると、彼女はその障害となる可能性を孕んでいる。

1年以内に吸血鬼にならなければいけない期限が近づいていくだけでなく、吸血鬼を狙う者迄現れてしまった中でコウのよふかしはどうなってしまうのか。よふかしのうたはまだまだ、我々をそう簡単に寝かせてはくれなさそうである。

初稿:2020年12月3日

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