第40夜:案外悪くない (初出:週刊少年サンデー2020年31・32号)
いつものようにナズナに血を吸われかけたコウは、深夜の学校での出来事がフラッシュバックした結果、思わず彼女を拒絶してしまう。
第41夜:大人になったら (初出:週刊少年サンデー2020年33号)
マヒルから電話で呼び出されたコウは、彼がやっている花屋の深夜配達を手伝う。しかし、マヒルが彼を呼び出した理由は別にあった。
第42夜:今日ウチ親いないんだ (初出:週刊少年サンデー2020年34号)
いつもの夜ふかしとは違い、今度はナズナがコウの家にやってきた。其処でコウが抱える悩みに対して、ナズナが出した回答は・・・。
第43夜:僕はあんたの考えを肯定できない (初出:週刊少年サンデー2020年35号)
コウはアンコから自分の知らない吸血鬼の情報を聞き出そうとするが、最終的に警察に通報されてしまい失敗する。補導されないよう逃げ隠れた公園で、彼はハツカに遭遇する。
第44夜:あるものが有ること (初出:週刊少年サンデー2020年36・37号)
ハツカに匿われたコウは、今迄出会った吸血鬼とはまた違う個性を持つ彼に興味を惹かれる。その頃、ナズナは激昂したニコと相対していた。
第45夜:恋バナしようや (初出:週刊少年サンデー2020年38号)
ナズナが殺されるかもしれない。そんな危機的状況の打開策として、ハツカはコウに対して、自分の眷属にならないかと持ち掛ける。
第46夜:仲良くヤろうや (初出:週刊少年サンデー2020年39号)
コウとハツカが吸血鬼達の溜まり場に着いた時、既にナズナはその場に居なかった。ニコの言葉を尻目に、コウは彼女を探し続ける。
第47夜:夜守くんの話がしたいんでしょ? (初出:週刊少年サンデー2020年40号)
いきなり家にやってきたナズナを出迎えたハツカは、彼女からの飲みの誘いを乗り気で受ける。彼は、ナズナがコウを自分に惚れさせる為のアドバイスを欲していると見抜いていた。
第48夜:どうして? (初出:週刊少年サンデー2020年41号)
暫くぶりにアキラに会ったコウは自分が吸血鬼になろうとしている気持ちを、まだ彼女に応援されている事を知って安心する。そして、彼と仲直りをしにマヒルもその場にやってくるが・・・。
第49夜:私の話 聞いてた? (初出:週刊少年サンデー2020年42号)
コウはマヒルについてきた女、星見キクが吸血鬼である事に気付く。彼女が何故マヒルと一緒に居るのか、彼はその真意を確かめようとする。
これまで「よふかしのうた」ではコウが吸血鬼になる事や、ナズナを始めとした吸血鬼達の存在は概ね肯定的な存在として描かれていた。しかし、吸血鬼を殺そうとしている探偵の鶯アンコや不穏な気配を漂わせている星見キクが登場してから、コウを取り巻くよふかしの世界は今迄とは違う様相を呈していくようになる。第5巻ではそのような展開を中心として進んでいく。
ナズナに出会い導かれてよふかしを楽しむようになったコウだったが、第37~39夜で起こった出来事をきっかけに、これまで通りの夜を過ごせなくなる事態に陥る。その原因は、第36夜から登場し始めた女探偵の鶯アンコによるものである。
アンコは表向き探偵として活動しているが、彼女の本当の目的は吸血鬼を狩る事のようである。実際、彼女はコウ達の目の前で吸血鬼を殺した上、吸血鬼になりたいという彼の考えを阻止しようとしている。他の話題に関してはおどけた態度を見せたり、コウが夜中に添い寝屋の勧誘をしているのを見逃したりと寛容な態度を取っているが、こと吸血鬼に関しては一貫して否定的である。また、コウのプライベートな情報をあらかた調べ上げていたり、少ない情報から彼が吸血鬼と関係がある事を見抜いたりと、探偵としての能力も充分にある事が伺える。
コウを追い詰める者が居る一方で、彼に助け舟を出すものも出てくる。それが吸血鬼の蘿蔔ハツカである。第3巻で登場した吸血鬼グループの1人であり、女装した男なのが第44夜で明らかになる。
登場時点で、2人の女性と1人の中年男性を従えており、自身が男でありながら女装しているせいか一時はコウを眷属に誘う辺りから伺えるように、眷属候補を選ぶのに性別のこだわりは無いらしい。
ハツカのやり方は端的に言えばSMの気質を含んでいて、眷属に対して飴と鞭を効果的に使い分けながら、その関係を維持しているようである。さらに、現状の打開策としてコウに自らの眷属になれと提案したり、ナズナから恋愛のアドバイスを求められるように、彼には他の吸血鬼よりも知性の高さや頭の回転の速さが見受けられる。
一見、可愛らしい大人しめの女子という風貌とは裏腹に、ハツカの考え方や性格は割と男性的な部分が目立っている。普段とは違う女性っぽい服装のナズナに対して「男」としての感想を述べているように、彼の精神的な部分においては男女のそれがフラットに作用しているようである。
アンコによって吸血鬼のことを知らされたマヒルの問いかけにより、吸血鬼になる事への迷いが生じたコウだったが、第42夜において共に一緒に夜を過ごしてきたナズナから一種の引導めいたものを渡されてしまう。
「非日常なんてものは長く続かない」
「吸血鬼なんて退屈なだけ」
恐らくナズナはコウを吸血鬼にしていいのか、迷っていたのだと思う。コウと過ごす夜を楽しく思いながらも、吸血鬼というカルマを背負わせる事が彼にとって本当に良いのか、それが彼女の中のひっかかりとしてあったのかもしれない。だから、コウが吸血鬼への迷いを打ち明けた時、彼を自分から解放する機会だと考えたのだろう。しかし、それによってコウが吸血鬼達に殺されるのだけは避けたかったから、ナズナは自分を犠牲にしようとしたのである。
コウが自分のすべき選択を考えている時、思い出していたのはナズナの寂しげな表情だった。彼女を退屈させたくない、他の誰かではなくナズナを好きになってこそ自分が吸血鬼になる意味がある。ナズナから教えてもらった、彼女と共に過ごす夜が自分が望むものだと、コウはようやく気付いたのだろう。
それはコウが初めて自分の中に見出した生への執着であり、希望である。吸血鬼であるニコに堂々と一喝したりと、なりふり構わぬ男らしさが出てくるほどに。
ようやくお互いがお互いを求めあっている事に気付き、コウとナズナの関係は変わり始める。現状維持ではなく恋仲になるという目標を共有したからである。黒一色に見える夜も、望めばきっと違う夜に出会える筈である。