もう離れ離れになりたくない。一縷の望みをかけて、幸樹はアーシェの元へと旅立つ!!!(ワガママハイスペック アーシェルート感想 後編)

7/4 日曜日

初めても、次も、その次も・・・・・・
お互いが両想いだと知り我慢出来なくなった幸樹とアーシェは、初めて身体を重ね合う。

7/5 月曜日

堂々交際宣言
翌日、幸樹は既に兎亜にアーシェと事に及んだのを勘付かれる。昼休み、作戦会議と称して彼はアーシェとお昼を食べることになり・・・。

7/14 水曜日

テスト期間中でも
かおるこの計らいにより、テスト期間中に関わらず生徒会の仕事という名目で幸樹とアーシェは2人っきりになる機会を得る。

その聖なる橋の名は
やっと誰にも邪魔されず2人っきりになれた幸樹とアーシェは、ベット上でお互いを求めあう。そして、情交の果てに彼女はおもらしをしてしまう。

7/28 水曜日

家庭教師アーシェ
アーシェは、幸樹の宿題を手伝う為に彼の家に来ていた。休憩中に幸樹から兎亜が家に居ない事を聞くと、彼女は急に悶々とした気分に陥る。

勝者の特権
期末試験の現国でアーシェに勝っていた幸樹は、その時の約束を果たしてもらおうと彼女の眼前で膨張した男性器を晒す。

8/13 金曜日

お待ちかねの初デート
ショッピングモールでデート中、幸樹はアーシェをある店に連れていく。其処はアクセサリーショップであり、アーシェはト音記号のネックレスを彼にプレゼントされる。

8/19 木曜日

決断、その理由
次のデートはアーシェの母親が帰国するという事で延期になった。そして、2度目のデートを迎えること無く夏休みが終わってしまう。後に幸樹はアーシェから事情を聞かされ、彼女の今後の進路に関する決断を委ねられる。彼が出した答えは・・・。

8/27 金曜日
9/1 水曜日
9/2 木曜日
9/3 金曜日
9/6 月曜日
9/18 土曜日
11/8 月曜日
11/15 月曜日
11/21 日曜日
11/22 月曜日
11/23 火曜日
12月某日
12/24
12/24 (ウィーン)

あなたがわたしの王子様
お互いのわだかまりを払拭し、もう一度恋人として結ばれた幸樹とアーシェ。今迄離れていた時間を取り戻すように2人は濃密なセックスを行う。

数日後 (ウィーン)

明るい未来へ向けて
喫茶店の屋外スペースで幸樹とアーシェはカップル同士の語らいに花を咲かせていた。そして、幸樹は卒業後に自分もウィーンで進学する事を打ち明ける。

おまけ
アーシェの家で夏休みの宿題に取り組んでいた幸樹だが、偶然彼女が隠し持っているエロ本を発見してしまう。そして、物色した本の中身からアーシェが興味を持っていそうな目隠しプレイを実践する。時系列としては本編の8月上旬にあたると思われる。

アーシェルートを実際にプレイするまでは、筆者にとっての期待値というものはあまり高くなかった。元々、他の3人に比べてアーシェに対する関心が相対的に低かった事が大きな理由ではあったが、遊び終えた今となっては最初に選んだのが彼女の話で本当に良かったと思っている。

「お待ちかねの初デート」迄は幸樹とアーシェの関係は順風満帆に進んでいた。しかし、ショッピングモールでアーシェがピアノを弾いている姿を見た時、幸樹の中でよぎった一抹の不安が後に現実のものになってしまうのである。

本来、自分の才能を認められるのは喜ばしい筈なのだが、今回のアーシェのように自分の予期せぬ方向に転がってしまう事もある。母親に認めて貰えた作曲の才能か、それとも愛する人との学園生活か。今後の自分の一生を決めかねない、重大な決断をしなければならなくなってしまった彼女が感じた重圧は相当なものだったと思う。

以前のアーシェなら多少は悩んだとしても、最終的にはウィーンへの転校を受け入れただろう。しかし、今の彼女には幸樹が、自分の才能を信じそれが開花するきっかけを与えてくれた最愛の人が居る。彼をおざなりにして作曲の道を歩むのは、彼女にとっては有り得ない事だった。

アーシェが幸樹に自分の進路を決めて欲しいと委ねた理由として、彼女は自身で最後まで決断を下せなかったと言っていた。しかし、個人的には他にも理由があったと思っている。恐らくだがアーシェは欲しかったのだ、これから自分がどんな事になっても幸樹が自分を愛し必要としてくれるという言葉や重いを。ところが実際に幸樹が出した答えには、彼を好きなアーシェの気持ちを汲んだものが含まれていなかった。

実はアーシェは幸樹に「決めて欲しい」とは言ったが、「選んで欲しい」とは言っていないのである。只の言葉遊びと言ってしまえばそれまでの話ではあるが、これらの言葉は似ているようで違う細かな差異がある。選ぶという事は、目の前にはいくつかの選択肢の中から1つを取るということである。だが、決めるという場合なら絶対に今処にある選択肢から取らなければいけない訳ではない。まだ気付いてない、それらよりもっと良質な答えを導くことも出来る。

アーシェは、幸樹なら自分が見つけられなかったより良い答えを出せるという希望を信じたかったのである。しかし、少なくともその時の彼は彼女の望みを叶えられなかった。アーシェの幸せの為に自分の幸せを諦めるという、幸樹の自己犠牲的な答えは逆に彼女を傷つけてしまった。

アーシェと一度別れてしまった幸樹のそれからは、ストーリーを進めている筆者にもその悲痛さや悲しさが嫌と言うほど伝わってきた。アーシェの送別会で彼女との距離を取ろうと黙々と幹事に徹したり、後に生徒会長として敢えて身を粉にして働く様子には、寂寥感すら滲み出ていた。だが、心の底ではアーシェとの別れを後悔していた彼は、彼女が居ない日々の中で彼女の影を追いかけていた。

やがて、幸樹は遂に限界を迎える。アーシェとの別れで蓄積した彼の精神的疲弊は、彼自身の肉体にもダメージを及ぼしてしまった。時に、心の不安定さは肉体にも悪しき影響を与えるというのは、実に人間の不思議な所である。そして、彼はかおるこのお陰でようやく、己の弱さと向き合う事に決めたのである。

個別ルートでもかおるこの存在感は大きい。敢えて事態の成り行きを見守りつつ、倒れてしまった幸樹に寄り添いながら彼の過ちを気付かせるようにゆっくりと導けるのは、やはり彼の先輩である彼女にしか出来ない事である。

幸樹は、これから作曲の才能をどんどん伸ばすかもしれないアーシェと向き合う事に恐れを感じてしまっていた。そして、そんな彼女に見合わない自分は身を引くべきなのだと考えた。しかし、それはアーシェは勿論、それ以上に彼自身が望んでいない筈の答えだった。更に、彼はかおるこからウィーンでの彼女の近況を知ることになる。それは、アーシェもまた自分と同じように悩み苦しんでいた、しかも今の彼女には孤独だった。

幸樹はアーシェを失くして、初めて気付いたのである。彼は彼女の1番近くに居た、それ故に気付くのに時間がかかってしまった。彼女は誰よりも好きな彼だからこそ、誰にも見せない自分の弱さをそっと見せていた。それなのに幸樹は、アーシェが自分無しでもやっていけると勘違いしてしまった。また、アーシェも自分が元気に過ごしているという空元気を幸樹に示そうとしていた。彼に対して重荷を背負わせてしまったという罪の意識もまた、彼女自身を孤独にしていた。

普通ならこの状況では諦めてもしょうがないと思う。しかし、幸樹の心は完全に折れてはいなかった。そして、彼はまた行動を始める、以前と違い其処には確かな信念があった。必要とあれば岩隈先生に頭を下げて、生徒会長としての仕事も放棄した。本当に成し遂げたい事の前には、形振りや言い訳なんてものは霧散してしまう。

幸樹を心配し見守るのは友人だけではない。岩隈先生や鷹司さんも彼の事を心配し見守っていた。特に先生は彼の痩せ我慢を見抜き忠告したり、彼の意図を汲んだ上で終業式を休む事を許した。大人も案外馬鹿には出来ないものである。願わくばこういう大人になりたいと思う。

「決断、その理由」の途中からアーシェ不在の状況が続く中で、物語を引っ張るのはやはり主人公である幸樹である。彼が悩み葛藤して其処から再び立ち上がっていく過程は、丁寧で目を離せないように描かれていたと思う。

アーシェルートは全体的に割と長めなボリュームだったが、最後迄飽きる事なく楽しめたと思っている。楽しげな展開とシリアスな展開がバランスよく織り交ぜられていて、筆者としてはこのくらいが丁度良い感じである。共通ルートでは幸樹に敵意を剥き出しにしていたアーシェも、個別ルートでは色々な表情や感情が表現されていて彼女の魅力も充分掘り下げられており、とても良かったと思う。

最初はすれ違いが多く、仲良くなるまでに時間のかかった幸樹とアーシェ。だが、互いの才能を認め合い男女としての仲も深め合う中で、大きい壁を乗り越え遂に確かな絆を手に入れた。物理的な距離は依然として存在するが、お互いを想う気持ちを忘れない限り2人の心はいつでも傍に居続ける筈である。

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