今回はコトヤマの「よふかしのうた」の感想である。
第1夜:よふかしのうた (初出:週刊少年サンデー2019年39号)
日常に嫌気がさして不登校、更に不眠になった夜守コウは初めて夜に家から飛び出した。ひょんなことからコウは謎の美女と出会い、自らの血を吸われてしまう。
第2夜:大きめの蚊 (初出:週刊少年サンデー2019年39号)
コウの血を吸った女は、七草ナズナという吸血鬼だった。コウはナズナとの出会いをきっかけに、自らも吸血鬼になりたいと思うようになる。
第3夜:ナイトフライト (初出:週刊少年サンデー2019年40号)
夜を楽しむために、コウはナズナと共に空を飛ぶ。
第4夜:てかラインやってる? (初出:週刊少年サンデー2019年41号)
今すぐ吸血鬼になれる訳ではない、そう思いつつもコウはナズナを探す歩みを止めない。そのモヤモヤはナズナの部屋に来ても解消されず・・・。
第5夜:悲しみよ、こんばんは (初出:週刊少年サンデー2019年42号)
トランシーバーで遊ぶコウとナズナ。一方、もう一つのトランシーバーの持ち主は女の子で・・・。
第6夜:アキラ (初出:週刊少年サンデー2019年43号)
ナズナと別れてからの帰り道、コウの持つトランシーバーの1つが鳴る。彼の前に現れた女の子は、幼馴染のアキラだった。
第7夜:お名前なんてーの? (初出:週刊少年サンデー2019年44号)
コウはナズナと遊んだ後、アキラとも会うようになっていた。やがて、2人が一緒にいる所をナズナに見つかってしまい・・・。
第8夜:いっぱい出たね (初出:週刊少年サンデー2019年45号)
一向にナズナが不機嫌な理由が分からないコウだが、それでも仲直りをしようと必死に彼女を追いかける。
夜ふかしをしよう、この漫画を読んでいるとそういう気分になってしまう。勿論1人でもいいのだが、もう一人誰かが傍にいると尚いいかもしれない。「だがしかし」で手腕を振るったコトヤマが、次に出した漫画が「よふかしのうた」である。
本作は物語の進行が早い方ではない、寧ろ遅いくらいである。コウとナズナが共に楽しく夜ふかしをする、ほぼそれだけである。しかし、この漫画の楽しみは寧ろ、彼等と一緒に夜ふかしを楽しんでいるような感覚を味わうことにある。
例えば、コウのように夜中に外を出て歩いたことがある人なら、あの何処か非日常にいるような感覚がなんとなくでも分かるのではないだろうか。同じ見慣れた場所なのに、昼と夜で印象がガラリと変わるというのは、なんとも面白いものである。
それだけなら普通の夜ふかしで終わる訳だが、コウの場合は違った。ナズナという吸血鬼に会ったことで、彼の夜ふかしはより非日常性を含んだものに変わったのである。コウが彼女と出会ったことで、彼の人生はどう変わるのだろうか。
割と下ネタが入っているが、からっとしていて尾を引かない程度の塩梅なので、すらすらと読めるのは素晴らしい。そして、コウとナズナのやりとりも可笑しく、そこは「だがしかし」にも引けを取らないぐらいである。
まだ始まったばかりではあるが、筆者としては本作の連載開始を機に少年サンデーをまた買い始めたので、しっかり追いかけたいと思っている。コウとナズナたちの夜ふかしはまだ始まったばかりなのだから。