厭世家と春の嵐が出会う時。桐丘さなの大正処女御伽話を読んでみた!!!

第一話「霜月、夕月 来タル」(初出:ジャンプSQ. 2015年8月号)
珠彦とユヅの出会いが描かれている。

第二話「秋冬ノ夜ノ春思」(初出:ジャンプSQ. 2015年8月号)
大正十年大晦日での話。

第三話「一ニ夕月、二ニ看病」(初出:ジャンプSQ. 2015年9月号)
風邪をひいた珠彦をユヅが看病する話。

第四話「花ノ東京ヘ」(初出:ジャンプSQ. 2015年9月号)
ユヅの新しい着物を買いに東京に行く話。

第五話「珠彦 死ス」(初出:ジャンプSQ. 2015年10月号)
父からの手紙により、自らが死んだことにされてショックを受ける珠彦。

第六話「流水行雲 春ノ森」(初出:ジャンプSQ. 2015年10月号)
ショックから立ち直れずにいる珠彦の為に、ユヅは彼をある場所に連れて行く。

第七話「黒百合ノ娘」(初出:ジャンプSQ. 2015年11月号)
珠彦の妹、珠子の初登場回。

第八話「幸セハ月明カリノ下ニ」(初出:ジャンプSQ. 2015年12月号)
今度はユヅが過労で倒れてしまう。碌に看病も出来ない自分を責める珠彦だったが、最後に彼はある決意をする。

番外編 (初出:ジャンプSQ.CROWN 2015 SUMMER)
ユヅとその親友の女の子とのやり取りが描かれた小品。ちなみにユヅの親友は後本編にて再登場する。

この世に絶望した厭世家(ペシミスト)に成り果てていた志摩珠彦が、春の嵐のような元気でたくましくも可愛らしい少女のユヅに影響を受け成長していく模様が描かれる「大正処女御伽噺」。2019年6月30日現在では既に完結してはいるものの、読んでおきたい漫画作品の1つとして改めて取り上げたい次第である。

珠彦は裕福な家の出身ではあるものの、不幸な事故により母と右手の自由を失い、世の中の全てに嫌気がさしていた。右手に障害を負った珠彦を気遣う家族は1人もおらず、それどころか邪魔者扱いされてしまえば彼の心が凍てつくのも無理はないのかもしれない。

そんな彼の元にユヅがやってきた事により、珠彦は少しずつ変わり始める。最初はユヅの献身的な家事や世話を拒否していたものの、その行動に裏打ちされた無償の優しさや気遣いを知り、受け入れ始めていく。そして、第八話の最後で珠彦はユヅを幸せにしたいと考えるようになる。生きることを放棄しかけていた珠彦が抱き始めた1つの思い。それは彼をどのような未来に導くのだろうか。

将来の珠彦の妻として買われたユヅ。家事全般が得意であり、人を世話することに全力を惜しまない良妻賢母な一面を持つ傍ら、恋愛全般に恥じらいを持つところはまさに乙女そのものである。

ユヅは作中で、落ち込んでいたり自らを拒否する珠彦に嫌な顔1つせず向かい合う。時に美味しい料理を作ってあげたり頭を撫でたりと、珠彦に寄りそうことを忘れない。だが、ユヅの良さはそれだけではない。

第五話で「自分が死ねば皆が幸せになる」と自嘲して笑う珠彦に、ユヅは真剣に怒っている。彼の頬を叩く強さは弱弱しいが、その眼には真剣なものが宿っている。ユヅは珠彦に基本的に優しいが、然るべき時に嗜めることが出来る強さを持っている。

この漫画の時代設定が大正なので、現代とはかなり剥離した価値観や風俗をしばし発見することが出来る。お金持ちとそうでないものの人権は不平等同然だし、教育の差は激しく自由な恋愛よりも家柄や世間体が重視されている時代である。そんな時代で珠彦とユヅの関係はどのように映り、どのように変容していくのかも注目すべき所である。

筆者は電子版で第1巻を買ったが、カバー裏のおまけもちゃんと付いていたので勇気をもって買って欲しい。何分完結してしまった作品なので、本屋に置いてあるとは限らない。気になる人が居るなら、電子版でもいいので手に取ってほしいと願っている。

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