仁太郎&常世VS珠代!昭和オトメ御伽話の感想を書いてみた!!!

第十六話「春ノ嵐」
珠子に連れられて常世が訪れた場所は、なんとユヅの家だった。常世はユヅに対して強い憧れを抱いていく。

第十七話「花嫁修業ハ誰ガ為ニ」
常世はユヅの元で家事全般の指南を受ける。一方、事情を知らない仁太郎は、彼女が浮気をしていると勘違いしショックを受けるが・・・。

第十八話「オカシナ仁太」
日々のアルバイトに精を出す仁太郎は、常世に渡すプレゼントや自分に芽生えた彼女への新たな気持ちに、思案を巡らせる。

番外編「踏マレタ草ニモ花ハ咲ク」
花嫁修業に勤しむ常世の姿が、ユヅの視点から描かれている。

第十九話「伏竜鳳雛カラタチ姫」
ユヅに家事の上達を褒められて浮かれる常世。幸せが続き笑顔が絶えない彼女に、珠代の魔の手が忍び寄ろうとしていた。

第二十話「オ誕生日会」
家に帰ってきた仁太郎を待っていたのは、常世ではなく養母の珠代だった。常世は別の場所で眠っていて、傍らには骨壺が置かれていた。

第二十一話「続キユク常闇①」
珠代の目的は、志摩家の再興の為に仁太郎と珠子を結婚させることだった。それを達成する為に彼女は常世を消そうとするが、其処に刀を持った仁太郎が現れる。

第二十二話「続キユク常闇 ②」
珠代から必死に逃げる仁太郎と常世。しかし、珠代も彼等を追い詰める為に、仁太郎の思い出が詰まった志摩キネマを放火してしまう。

番外編「思ヒ出ノ志摩キネマ」
常世と仁太郎とそのおじいの、思い出の幻燈。

第二十三話「終ワラナイ常闇」
珠代が追いつけない場所へと、仁太郎と常世は飛ぶ。

第二十四話「遺書」
警察の所に居た珠代の元に、珠子が訪れる。珠子の手には仁太郎が書いた遺書が握られていて・・・。

特別編「サザンカハ知ラナイ」
リゼが主役の短編であり、単行本描き下ろしである。

今回は大正処女御伽話を事前に読んだ読者なら、かなり読み応えのある話になっていると思う。前作の看板キャラであるユヅの登場や珠代との決着、物語の展開に大きなはずみがついていた気がする。リアルタイムでの閲覧は勿論のこと、改めて一気に読んでも仁太郎と常世の行き着く先の不透明さに、どきどきさせられた。

第十六話で久しぶりにユヅが登場した。筆者の予想ではもう少し引っ張るかと思ったが、登場のタイミングとしては割と早かったなと思っている。容姿自体はあまり変わっていないものの、三つ編みは無くなっているし身長も少しは伸びたのだろうか。あの大正処女もすっかり母親らしい大人の女性になっていた。

しかし、ただファンサービスとして登場させるだけではなく、前作の主役にしか出来ない役目をしっかりとこなしている。特に、ユヅが常世にある着物を着付けする場面は、きっと何度も読み返したくなる名場面である。常世のこれからの生き方を体言する人物として、ユヅほどの適任者はまずいないだろう。

一方で、全く変わらず周りに悪影響しか及ぼさない人間も居る。志摩珠代は最後迄一貫として羅刹だった。一時でも自らを省みた父親の珠義すらも越える冷徹ぶりである。仮に改心するぐらいなら、此処迄の所業はしていないだろう。敢えて彼女を改心させなかった所に、作者の強いこだわりを感じた。

昭和オトメ御伽話もコミックス3巻分迄描かれてきたが、今のところ前作に比べて見劣りしてしまうというのが正直な所ではある。面白いと言えば面白いが、続きを早く読みたいという気持ちは以前ほど強くないのである。しかし、志摩珠代という前作では解消されなかった障害がなくなった後に、物語をどのように盛り上げつつ 常世と仁太郎たちの成長を描いていくのか、気になる所ではある。

追記

第3巻の描き下ろしとして収録された「サザンカハ知ラナイ」は、連載中リゼに影の薄さを感じていた筆者にとって、彼女を大きく意識させるエピソードだったと思う。リゼの仁太郎に対するメルヘンチックな想いや、さざんかの花言葉を体言した故の彼女の叶わぬ恋を暗示させる描写が、丹念に描かれている。

このエピソードを読まなかったら、筆者のリゼに対する見方はいつまでも変わらなかったと思う。例え恋仲になれなかったとしても、仁太郎にとってリゼは忘れがたい大切な人間の1人であり、彼女もまた幼い頃憧れていたお姫様になれた事が、せめてもの救いではないのだろうか。

初稿:2020年2月28日
第2稿:2020年7月3日

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