第二十五話「新シキ日々」
命を懸けた狂言自殺を経て、 常世と仁太郎は有馬温泉で新生活を送っていた。
第二十六話「見エナイ住人」
常世と仁太郎達が住む廃旅館では、度々幽霊が目撃されていた。原因を探る為に、建物の持ち主が居たという315号室に行くことになり・・・。
第二十七話「私ノ心ニ咲イタモノ」
律は常世が働きすぎていると感じて、彼女を心配していた。そこで、律は常世が働く旅館を訪れて・・・。
第二十八話「民宿騒動①」
銀行で3姉妹に突然連れていかれた仁太郎と、掃除を頼まれた常世の行先は、同じ場所の古びた民宿だった。
第二十九話「民宿騒動②」
病気と借金を背負いながらも、周りの説得に耳を貸さないオババへの説得に苦労する仁太郎は、偶然彼女の日記を見つける。彼は彼女の日記が、過去に読んだ常世のそれと重なるものがある事に気づき・・・。
第三十話「民宿騒動③」
仁太郎は自らの貯金でオババの借金を返済し、彼女を説得する事に成功する。そして、彼はオババから譲り受けた建物で、常世の夢を実現させようとする。
第三十一話「サザンカ再ビ」
新しく民宿とパーラーを始める為に、建物の改修に勤しむ仁太郎と常世。そんな2人の元に、リゼと月彦が訪れる。
第三十二話「形影一如ナ二人」
仁太郎と常世は、開店前に痴話喧嘩をしてしまう。
第三十三話「変ワラズノ愛」
仁太郎との痴話喧嘩で家を飛び出した常世だったが、神社で仁太郎と「形影一如の夫婦」になる誓いを立てた時のことを思い出す。
第三十四話「赤イ花」
常世の体調が元に戻らず、ついに彼女は吐血してしまう。
特別編「有馬、星空ノ夜」
単行本4巻の描き下ろしであり、「新婚初夜」を迎える常世の妄想から始まる短編である。
この記事を書いている時点で筆者は第37話迄読んでいる。正直言ってその先の展開が、もう何も分からなくなってしまった。ただ、昭和オトメ御伽話にも終わりが近づいている事は確かである。筆者としては勿論最後迄見届ける積りだが、終わり方によっては本作の完成度が、大きく変わってしまうと思っている。
今回は、新天地での常世と仁太郎の生活が中心に描かれている。珠代というしがらみが無くなったお陰か、全体的に雰囲気が明るくなったようである。大正処女御伽話の時の雰囲気に近く、肩の力を抜いて読むことが出来た。筆者も結局は登場人物の明るく楽しげなやり取りを期待していたのかもしれない。
桐丘さなは、人間の陰惨な部分を描いたり、負の感情を想起させる描写が非常に上手いと、筆者は思っている。昭和オトメ御伽話ではその傾向が前作より強いのだが、それが今回は裏目に出る可能性があると予想している。
個人的には、読んでいると暗い気持ちになる展開自体は好きではない。しかし、そういう展開が物語を拡げる上で、効果的なスパイスになる場合はその限りではない。大正処女御伽話ではその辺りのバランスが取れていて、読者もついていけるレベルに調整されていたと思っている。
本編の感想とは少しずれた話題となってしまったが、桐丘さながどのように決着をつけるのか、非常に気になる所である。常世と仁太郎は最後に幸せを掴むことが出来るのか、その答えが出る時はもう、すぐ其処迄迫っている。
追記
4巻を読んでから気付いた事だが、第二十七話「私ノ心ニ咲イタモノ」の最後に1頁描き下ろしが追加されている。そのおかげで話の終わり方がより綺麗になり、律の心理描写も分かりやすいものになっている。ただ、律に関しては後半に登場した事もあり、リゼよりも中途半端な扱いになってしまっているように感じられたのが、若干残念ではある。
「有馬、星空ノ夜」に関して言えば、その後の第5巻の展開を知っていると尚更切なくなる話である。寒空の中で常世を後ろから抱きしめる仁太郎の図は、かつて大晦日に縁側で共に毛布に包まった珠彦とユヅのそれを想起させてくれた。
初稿:2020年3月8日
第2稿:2020年7月3日