今回紹介するのは、桐丘さなの「大正オトメ オトギバナシ アンコォル」である。本書は、全5巻で完結を迎えた大正処女御伽話のファンブックであり、本編の番外編やショートギャグを含めた5編の描き下ろし漫画が収録されている。また、最初の数頁には現代の私服姿のユヅを新たに描き下ろしたカットや、カラーページも含んだ導入漫画も入っており、表紙も含めるとオール描き下ろしと言っても過言ではない贅沢な仕様となっている。
甘ずっぱ～いお正月
コミックス第2巻に収録されている第十三話の、その後を描いた話である。初めて接吻した珠彦とユヅの初心なやり取りが描かれている。
らせつだらけのクイズショー
志摩5兄弟を主役に据えた、クイズ番組仕立てのショートコメディである。この作品で、本編でほぼ出番が無かった長男珠樹のエロキャラが確立された。また、本編でのとあるシーンが流用され、オチに一役買っている。
オトメたちの西遊記
主要キャラによる、西遊記をパロディにした4コマ漫画である。
立花夫婦の休日
最終回よりその後の、初めての夫婦喧嘩をしてしまった珠彦とユヅのやり取りが描かれている。
タマコロマンス
珠子を主役にした4コマ漫画であり、策を異性として意識してしまう珠子が描かれている。この2人が最終的にどうなったかは、昭和オトメ御伽話で明らかになる。
本書の初出は2017年11月23日のコミティア122であり、同時発売として「トリコトナリテ 0→6 総集編」という漫画作品も別に刊行されている。
筆者は、後日取り扱いが始まったとらのあなの通販で本書を購入した。その時に特典で付いてきたのが、冒頭の写真にも写っている描き下ろしのユヅが居るクリアファイルである。
本書のように、連載終了後に同人誌という形態で関連書籍が出されるのは多くなく、それだけ作者による作品への思い入れとファンの熱い支持が重なったことの結果だと言えるかもしれない。今から本書を手に入れるのは難しいことではあるが、大正処女御伽話を好きになった訓練された信者達にこそ、手に入れて貰いたいマストアイテムであるのは間違いない。
