千早さんと志真の関係はソーシャルディスタンスを超えられるのか!?「千早さんはそのままでいい」読んでみた!!!

33kcal 「ねえ・・・ぬいでもいい?」(初出:ジャンプSQ. 2016年9月号)
文化祭の買い出しの帰り道、志真と千早さんはバス停で雨宿りしていた。前回のケンカの後もあり若干の気まずさを覚えている彼の元に、岸辺さんからメッセージが届く。

34kcal 「あれ! あれあれ 例のあの人‼」(初出:ジャンプSQ. 2016年10月号)
千早さんは志真と一緒に彼の家の食堂で、文化祭に使うギョーザの仕込みを手伝う。その最中に真知が縣雫を伴い帰ってくる。

35kcal 「志真は昔から変わらないなあ・・・」(初出:ジャンプSQ. 2016年10月号)
文化祭で使う筈だったホットプレートを、用意し忘れてしまった千早さん。しかし、志真のフォローに助けられた彼女は、彼が昔から自分を助けてくれていた事を思い出す。

36kcal 「楽しい食卓を壊すのはもっとだめ‼」(初出:ジャンプSQ. 2016年11月号)
文化祭当日、千早さん達のクラスに遊びに来た真知と縣さんは、些細な事故から他のクラスの男子に絡まれてしまう。それを見つけた千早さんは、毅然とした態度で立ち向かう。

37kcal 「・・・・・・そうかも・・・」(初出:ジャンプSQ. 2016年11月号)
互いに休憩時間が被ったので、一緒に行動する千早さんと志真。2人は移動の途中でカップルに遭遇しそうになり、咄嗟に近くの教室に隠れる。其処で、先程の千早さんが巻き込まれたトラブルの話になった時、彼女の目から突然涙が溢れ出して・・・。

38kcal 「なんかあった?」(初出:ジャンプSQ. 2016年12月号)
振替休日を映画館で過ごす、千早さんを始めとしたいつものメンバー達。しかし、岸辺さんは千早さんと志真、2人の距離感の変化に気付いていた。

39kcal 「出来の悪い娘ですみません・・・」(初出:ジャンプSQ. 2016年12月号)
映画館から帰宅後の志真に、千早さんから電話がかかってくる。母親の代わりに料理を作る彼女の為に、志真は電話越しのアドバイスをする事に。

40kcal 「あとで大事に食べよ・・・」(初出:ジャンプSQ. 2017年1月号)
千早さんがケーキ屋でのバイトに精を出す一方で、志真は文化祭での1件を引きずっていた。そしてクリスマスの日、岸辺さんの提案で3人はバイトしている千早さんの様子を見に行く。

41kcal 「えっ 神の飲み物じゃん・・・」(初出:ジャンプSQ. 2017年2月号)
初詣に来た4人の内で、千早さんがはぐれてしまう。迷子になった彼女は、昔同じような状況になった時に自分を見つけてくれたのが、志真だった事を思い出した時に・・・。

42kcal 「丸ごといってしまった・・・」(初出:ジャンプSQ. 2017年3月号)
正月太りを解消する為に市民プールに来た千早さんは、其処で縣さんに出会う。

43kcal 「千早さん千早さん イチゴもチョコもなくなる」(初出:ジャンプSQ. 2017年4月号)
バレンタインデーが近づく中で千早さん達は手作りチョコに挑戦する・・・、志真1人を除いて。

44kcal 「だったらどうしたというのだね・・・」(初出:ジャンプSQ. 2017年4月号)
バレンタインデー当日、志真はいつものメンバーから義理チョコを貰うが、物足りなさを感じてしまう。そして、彼が自分の部屋に戻ろうとした時、扉の前で待っていた千早さんに出くわす。

45kcal 「半分やるよ」(初出:ジャンプSQ. 2017年5月号)
先に春休みを迎えてだらける志真を横目に、今日も真面目に登校する真知。給食の時間に彼女は、同級生の宝にデザートジャンケンに勝つ必勝法をアドバイスする。

46kcal 「ノーブレス ノー水で‼」(初出:ジャンプSQ. 2017年5月号)
3月14日、前回のホワイトデーのお返しを考えた志真と累の出した結論は、焼肉だった。炭水化物ダイエットに挑戦していた千早さんは、米を我慢していたが志真達のダメ押しに負けてしまい・・・。

47kcal 「やせたい・・・」(初出:ジャンプSQ. 2017年6月号)
千早さんがまだ中学生だった頃、彼女には花音という友人が居た。志真の事が好きらしい花音は、放課後になったら彼に告白すると言い出す。最初は無関心を装っていた千早さんだったが・・・。

48kcal 「いい これ もらう」(初出:ジャンプSQ. 2017年6月号)
やせたいと初めて決心した頃の出来事の夢見て目覚めた千早さんは、その日に限って志真と2人っきりで花見に出掛ける。いつもと雰囲気が異なる彼と今朝見た夢を引きずり続けた結果、千早さんは遂に・・・。

49kcal 「・・・千早 これ 知ってた?」(初出:ジャンプSQ. 2017年7月号)
千早さんは志真と花見に行った時の事を、岸辺さんと綾目さんに取り調べされる。全てを白状した彼女に対して岸辺さんは、キスをした以上そのけじめを付けるべきだとおちょくる。

50kcal 「あそこで言うのずるくない・・・⁉」(初出:ジャンプSQ. 2017年7月号)
志真が家の事情で引っ越す事になり、千早さん達は見送りに来ていた。なかなか心の整理がつかない千早さんに対し、彼が最後に言った言葉は・・・。

50kcalその後
単行本3巻の描き下ろしである。

「千早さんはそのままでいい」第3巻では、千早さんと志真の関係の変化を主軸に物語が進んでいく。これまで幼馴染という関係で収まっていた2人が、少しずつお互いを恋愛対象として意識するようになっていくのである。

千早さんと志真の関係が変わる最初のきっかけになったのが、縣雫である。彼女は千早さんと同じように食を愛していて、その為の体型維持をかかさないようにしている。その努力も相まって、縣さんの体型自体はスレンダーに近いが出るものは出ていて、ある意味で千早さんとは対極的なプロポーションを持っている。それでいて服装は露出控えめで地味なものだが、それが逆に彼女が本来持っている美貌をより際立たせている。

尤も縣さん自身は、自分が志真の興味を惹きつけているのを知る由もなく、千早さんから嫉妬の感情を向けられているのにも気付かなかった。しかし、最終的には食を楽しむ為のダイエット仲間として、千早さんと仲良くなった。余談ではあるが彼女の登場回は50kcalが最後であり、筆者としてはもう少し出番を増やして欲しかったという気持ちは多少なりとも持っている。

33~37kcalは文化祭期間内でのエピソードであり、千早さんの志真に対する想いの機微を中心に描かれている。

32kcal(第2巻に収録)でも縣さんの事を嬉しそうに話す志真に複雑な感情を抱いていた千早さんだが、いざ会話している2人を目の当たりにすると、明らかに不満そうな態度を見せている。彼女自身はまだ自覚していないものの、少なくとも読んでいる我々から見れば其処に1番当てはまる感情は「嫉妬」の2文字なのは、想像に難くない筈である。そして、すぐ傍に居る志真がそれに全く気付いていないというのが、またもどかしいのである。

年頃の女子の微妙な気持ちに鈍感な志真ではあるが、言われっぱなしで終わる男ではない。自身が食堂を経営している実家の息子であるという立場を最大限に利用して、文化祭で使う筈だったホットプレートを用意し損ねたという千早さんのミスをカバーするという、ファインプレーを成し遂げるのである。

鉄鍋を振るい料理を作る志真を目にした千早さんの脳裏をよぎるのは、かつて同じように自分が困っていた時に手を差し伸べてくれた幼い時の志真だった。千早さんからすれば、彼が自分とは違う別の女性に興味を示した事で、今迄とは違う別人のような遠い存在になってしまったと思ったかもしれない。しかし、彼が昔と変わっていないことに気付くと同時に、その行動に対して今迄とは違う感情も千早さんには芽生え始めたのである。

文化祭当日に千早さんのクラスで催していた中華喫茶で、遊びに来ていた真知と縣さんが柄の悪い男子生徒に絡まれた時に、2人を助けた千早さんを突き動かしたのはやはり志真である。前回の一件でより志真を意識するようになった千早さんにとって、トラブルに遭遇した2人があの時困っていた自分の姿と重なったのか、そんな2人を助けようとしたのは彼からの強い影響からであると思われる。

そして、男子生徒の暴走を止めようとする千早さんの文句が「たのしい食卓を壊すのはもっと駄目」という、食を愛する彼女の思想信条を集約した一言として表現されているのが、よく練られていて印象的である。

一見、トラブルが収束して雰囲気が元通りになったように見えた最中、教室に戻ってきた志真は千早さんの笑顔が取り繕ったものであると見抜いていたのは、慧眼の至りである。彼の予感はやはり当たっていて、休憩の合間に空き教室で2人っきりになった時に、千早さんはようやく安心したのか堰を切ったように泣いてしまったのである。

泣き出す千早さんに動揺してしまった志真は、思わず駆け出し彼女の為に沢山食べ物を買ってくる。志真が差し出した食べかけのチョコバナナを貰った千早さんは、自分の軽はずみな行いに赤面してしまう。彼女の志真に甘えてしまうという言葉に対して、全く意識されてる訳ではなかったと安心した彼は軽い冗談のつもりで自分の事が好きかと聞く。

その千早さんの返答が冗談交じりではなく真に迫った肯定なのだから、志真も釣られて赤面してしまう。周りに誰も居ない2人っきりの状況だからこそ、出てしまった言葉と其処に重なった想いは彼等の間をゆっくりと染み込んでいくのである。この一連のやり取りは勿論4コマではなく通常のストーリー形式で描かれていて、青春の甘酸っぱさと次への展開への期待が感じられる運びとなっている。

その後は通常の話が進む中、千早さんと志真の距離が少しずつ進んでゆく。直接言葉にせずとも、お互いの気持ちが幼馴染のそれを超えたものになっているのを双方が認め始めていた。しかし、志真が転校しなければならなくなってしまい、2人の距離が文字通り遠くなってしまった。

千早さんは志真と両想いになれるのか、そして彼女のダイエットは成功するのか。50kcalの急展開を皮切りに物語は終わりへと向かい始めていた。

初稿:2020年11月20日

タイトルとURLをコピーしました