1kcal 「私ってやせた方がいいかな」
自分の体重が気になる千早さんは、ダイエットをしようとする一方で、食べない事を選ばない。
2kcal 「男子の言う女子の平均は全然アテになんない」
痩せる為に昼食を抜いた千早さん。しかし、空腹に耐えきれなくなり・・・。
3kcal 「ごはんも進んでしまう・・・」
調理実習で作る事になったギョーザの誘惑が、千早さんを襲う。
4kcal 「こっ・・・こいつ・・・ゾーンに入ってやがる‼」
志真にスクール水着姿を見られた千早さんだが、それでもスイカを食べまくる。
5kcal 「女のダイエットは胸からやせてしまうんだぞ⁉」(初出:ジャンプSQ. 2015年4月号)
プール授業で、岸辺さんの体型と比較されてしまう千早さんに、志真は心を乱される。
6kcal 「今日だけだからね⁉」(初出:ジャンプSQ. 2015年5月号)
痩せる為にダイエット本を買おうとする千早さんだが、何も知らない志真は彼女の怪しげな行動にあらぬ想像をする。
7kcal 「食欲を制圧したしな!」(初出:ジャンプSQ. 2015年5月号)
千早さんを同類と称する謎のイケメンの正体は、同中で昔は太っていた累だった。
8kcal 「・・・・・・・・・神よ・・・‼」(初出:ジャンプSQ. 2015年6月号)
久しぶりに志真の実家が営業している食堂に来た千早さんは、成り行きで手伝う事になり・・・。
9kcal 「銭湯すごい‼」(初出:ジャンプSQ. 2015年7月号)
銭湯で千早さんと志真は、それぞれ似た指摘をされて動揺する。
10kcal 「いいじゃん 文明開化しとけよ」(初出:ジャンプSQ. 2015年7月号)
勉強会の為に来た志真の家に千早さんだが、岸部さんの言葉を思い出し変に意識していまう。
11kcal 「ひとりじゃ一本 食べきれないから」(初出:ジャンプSQ. 2015年8月号)
志真は駄菓子屋に置いてあったアイスをきっかけに、千早さんとケンカになった時の事を思い出す。
千早さんはそのままでいい 番外編 (初出:ジャンプSQ.CROWN 2015 SUMMER)
2頁の掌編である。
12kcal 「トマトダイエットってあるんだよ-」(初出:ジャンプSQ. 2015年9月号)
補習を受ける羽目になった千早さんと彼女を慰める志真を、遠くから見ているのは・・・。
13kcal 「気付いてねェのか?そのラムネ」(初出:ジャンプSQ. 2015年9月号)
夏祭りに来た志真達。千早さんと累は早速、出店の食べ物のカロリーを気にし始める。
14kcal 「ちゃうねん」(初出:ジャンプSQ. 2015年10月号)
同じラムネで間接キスしてしまった、千早さんと志真のすれ違いが続く。
15kcal 「すきやきたべたい・・・」(初出:ジャンプSQ. 2015年11月号)
千早さんは岸辺さんに何故痩せたいのかを、問われて答えに窮する。
16kcal 「何故 貴様がそれを・・・⁉」(初出:ジャンプSQ. 2015年11月号)
女の子の体型について累と討論していた志真は、千早さんを見つけて・・・。
17kcal 「ホントに・・・もう嫌い・・・」(初出:ジャンプSQ. 2015年12月号)
痩せる為にジョギングする千早さんは、自分が太っている原因は志真にあると考えるが・・・。
17kcalその後
単行本だけの4頁描き下ろしである。
本記事のメインである「千早さんはそのままでいい」の感想を書こうとして、暫く筆を進める事が出来なかった。何となく最初の導入が思い浮かばかず四苦八苦していたが、やはりこの話をしておいた方が良い感じがしたので、このまま筆を進めようと思う。
当ブログを愛読している読者ならご存知の通り、筆者はエロゲや漫画を通して可愛い女の子が出てくる創作物を紹介し、その感想を述べてきた。しかし、それらを実際に受け入れるようになったのは割と最近の話であり、個人的にはその手の類に対するハードルは依然として高いと思っている。
何しろ今の時代、「可愛い女の子」が出てくるコンテンツは過剰な程に存在している。それらを全て楽しもうとしても、時間とお金が足りないのは目に見えている。最早「可愛い女の子」というのはそれ自体が一種の前提条件のようなもので、それしか売りがないコンテンツは少なくとも筆者からすれば、態々触れる必要の無いものである。
此処で「千早さんはそのままでいい」を取り上げたのは、本作が前述したような作品達とは異なると思ったからである。今迄持論を述べてきたが結局の所、筆者は本作を面白いと思ったから取り上げたいというシンプルな理由に帰結するのだという事だけは、理解して頂けたら幸いである。
本作の読みどころの1つは、食欲とダイエットの間で揺れ動く主人公の千早さんである。彼女は自分のふくよかな体型や食いしん坊な性分を気にしており、事ある毎にダイエットしようとしては目の前の食べ物に負けてしまう。しかし、周囲の人間は寧ろそんな彼女に愛着や親しみを持っていて、「千早さんはそのままでいい」と思っているのである。
本作は基本的に4コマ漫画形式だが、千早さんの実食シーンを中心に一部の場面は通常のストーリー形式で描かれているのが特徴がある。その為に千早さんが美味しく食べる場面は1コマ1コマ丁寧に描かれていて、読んでいる我々も食欲が湧きつつ彼女の可愛さを堪能出来るという、一石二鳥な演出となっている。ちなみに筆者がお勧めする千早さんの実食シーンは、8kcalでの彼女が出来立てのから揚げをつまみ食いしてしまう場面である。
本作のもう1つの読み所は、千早さんとその幼馴染である志真、2人の進みそうで進まないラブコメである。志真は表向きは千早さんのダイエットを応援している体だが、本当は「そのまま」の彼女で居て欲しいと思っている。ちなみに彼も低身長で小柄という自身の体格を気にしていて、その点で2人は似た者同士である。基本的に仲の良い2人だが、異性としての1歩踏み込んだ関係になかなか踏み込めない、初心な関係性も注目したい所である。
2人の関係性を描いたエピソードで読んで欲しい話を挙げるならば、筆者は11kcalを提示したいと思っている。いつもの美味しそうに食べる千早さんではなく、悲し気な面持ちでぽっきんアイスを咥えている彼女が描かれているのが、印象的である。
本編を盛り上げる個性的な登場人物として、志真の親友でダイエットに成功した累や千早さんと対照的にスレンダーな体型を持つ岸辺さんが活躍している。彼等の賑やかでユーモラスな学校生活や掛け合いも、読み応えがあり面白い。
岸辺さんと言えば、「兄の嫁と暮らしています。」という作品にも、同じ容姿を持つ女の子が登場する。但しそちらに登場する岸辺さんはあくまで「岸辺志乃」であり、本作の「岸辺いちご」とは別人である。「兄の嫁と暮らしています。」はくずしろの代表作の1つであり、本作とは方向性が違うものの一定の評価を得ているので、興味のある読者は是非そちらも読んで頂きたいと思っている。
ダイエットに成功したいが食べる事も辞めたくない千早さんの、欲張りで可愛らしい物語が始まる。
初稿:2020年7月4日