前回に引き続き、愛ルートの感想を綴っていく。
愛 10
誠と愛は登校出来るだけの体力を取り戻し、響子や光一を始めクラスメイト達から暖かい歓迎を受け、学園に復帰する。周りに対して気を配るようになった愛と彼らの好意的な反応に、誠は思わず嫉妬してしまう。そして、愛は誠に料理を振舞いたいと言い始めた。
愛 11
愛の誠への密着ぶりは拍車がかかっており、誠は彼女に学園での過度なスキンシップは控えるように言い聞かせる。その場では頷く愛だったが、家で誠が自分の部屋で休んでいるときに、愛がやってきて・・・。
愛 12
折り紙はその日、団体客の相手で大忙しであり愛も含めて、4人で店を切り盛りしていた。そんな時、接客の上手いこころに対抗しようとして、愛は接客に挑戦するが、ぎこちない様相を呈してしまう。
愛 13
放課後、誠がこころとメールのやり取りをしている所を見た愛は、自分も携帯電話が欲しいと言い出す。ほたるの計らいで、スマートフォンを手に入れた愛は、誠との文字のやり取りに夢中になる。
愛 14
学校でも、愛は自撮りのやり方を響子から教えてもらったりして、スマートフォンの使い方を覚えていた。誠は、授業中でもメールを送ってくる愛に返した1文がきっかけで、教室内で彼女を抱く羽目になってしまう。
愛 15
こころに手伝ってもらい計画した愛とのデートは、大成功で終わる筈だった。婚約指輪を渡し愛との将来を誓う誠に対して、愛もまた彼にある重大な決意を伝える。
愛 エピローグ
愛が里に帰ってから、誠は自分の隣に彼女が居ないことに寂しさを覚えていた。しかし、帰りのホームルームで転校生を迎える報せを聞いた誠は、すぐ折り紙に帰る。店先でこころと会話を交わした後、店内に入ると其処に居たのは・・・。
今迄のこころや響子の派生ルートよりも、比較的解決すべき問題が最後の方に出てきたのでその分、日常のシーンが多く楽しめるようになっていたと思う。今迄以上に、愛が色々なものに興味を示したり挑戦するシーンが描かれていたりと、コミカルで気楽に楽しめる話になっている。
愛が料理を作り、それを誠に食べさせる場面は個人的に目立っていたと思う。里に居た頃の回想シーンでも、誠のご飯をよそってあげたりと家庭的なところが見られたが、実際に彼女のその部分が見える良い場面である。料理している場面を誠に見られたくないという、彼女の誠に対する完璧主義な所も、愛らしい理由で面白いと思う。
また、愛がこころに対抗して不慣れな接客をぎこちなく行う場面は、立ち絵では表現しづらいものをSD絵で代替するという、メリットが遺憾なく発揮されていたと思う。この場面に限らず、SD絵を使ったシーンは全体的に楽しめるので、筆者は後でSD絵のCGだけでも何回か見直すことが多い。
個人的には誠がこころに愛と付き合っていることを告げる場面が、見ていて辛かった。物語の進行上仕方ないとは言え、彼女が悲しむところは基本的に見ていられないので、こちらの胸が張り裂けそうにならないか心配になった。しかし、その後に誠とデートの計画を練ってあげたりと、本当に良い娘としか言いようがない。
物語の終盤、夜空に花火が打ちあがる中で誠からプロポーズされた愛が、一度里に帰ることを彼に告げる。これはある意味で、かつて誠が愛に黙って里を出た状況の逆転である。今度は愛が誠の元から離れる形になる訳だが、どちらもその目的が、前に進むという希望を持ったものであることには、変わりない。
しかし、あれほど誠から離れまいとしていた彼女が、自分達の未来の為とは言え自分から旅立つ決心をするとは、余程のものとは言えないだろうか。ある意味、アマツツミで一番成長した登場人物は愛かもしれない。
誠一筋を貫き通しそれ故に周りに無関心であり、過去にずっと囚われてきた愛。そんな彼女も外の世界を知り、時に命懸けの恋愛を身を投じながらも、自分にとっての本当の幸せに向き合えるようになっていった。もう一度、初めからやり直すことにはなったが、今の彼女ならきっとこれまで以上に「家族」や「友人」達と向き合える筈である。隣には愛すべき人も居るのだから。
これじゃあ、愛が主人公みたいじゃないか()。