告白しません、勝つまでは。「それでも歩は寄せてくる」読んでみた!!!

第1局 (初出:週刊少年マガジン2019年14号)
高校1年生の田中歩は、2年の自称将棋部の部長である八乙女うるしに恋をしていた。そんな歩はうるしに告白する為に、今日も将棋で彼女に勝とうと勝負を挑む。

第2局 (初出:週刊少年マガジン2019年14号)
いつも将棋で負けている歩に対して、うるしはもう少し攻めを意識しろというアドバイスをする。あくまで守りの戦法を貫こうとする歩だったが、彼女のとある一言に反応する。

第3局 (初出:週刊少年マガジン2019年15号)
将棋部を正式な部活動にしたい願望を持つうるしは、部員が増えて欲しいと漏らす。しかし、歩は彼女のその一言に動揺してしまう。

第4局 (初出:週刊少年マガジン2019年16号)
上機嫌に「と金のうた」を口ずさむうるしの前に歩が現れる。

第5局 (初出:週刊少年マガジン2019年17号)
将棋部に向かう途中、うるしは歩が剣道部の生徒に勧誘されているのを目撃する。

第6局 (初出:週刊少年マガジン2019年18号)
新入部員が入ると大喜びのうるしと対照的に、もう2人っきりなれないとがっかりする歩。しかし、実際は・・・。

第7局 (初出:週刊少年マガジン2019年19号)
うるしより先に将棋部の部室に来ていた歩は、なんとラブレターの返事を書いていた。

第8局 (初出:週刊少年マガジン2019年20号)
うるしに勝てず疲れた表情を見せる歩を見て、彼女は将棋崩しでの勝負を提案する。

第9局 (初出:週刊少年マガジン2019年21・22号)
ジャージ姿で浮かない顔のうるしに対して、歩は彼女を元気づけようとする。

第10局 (初出:週刊少年マガジン2019年23号)
歩は無敵囲いでうるしに挑もうとするが、思いっきり彼女に笑われてしまう。

第11局 (初出:週刊少年マガジン2019年24号)
雨が降る将棋部終わりの帰り道、歩はうるしを相合傘に誘う。

第12局 (初出:週刊少年マガジン2019年25号)
うるしはたい焼きの買い食いを歩に提案するが、彼はそれを下校デートだと指摘する。

第13局 (初出:週刊少年マガジン2019年26号)
歩が新入部員を連れてきて正式に将棋部になった事を喜ぶうるしは、これは夢じゃないかと彼に聞く。すると歩は・・・。

第14局 (初出:週刊少年マガジン2019年27号)
どうしても将棋部の人数を増やしたいと言う、うるしの言葉を聞いて歩は渋々ながら自分も手伝うと申し出る。

おまけ
6頁の単行本1巻描き下ろしである。

ラブコメ漫画というジャンルにおいて、山本崇一朗の立ち位置を疑う者は最早少ないと思われる。「からかい上手の高木さん」という一大ラブコメ作品を誕生させた彼が、その系譜を継ぐものとして世に放ったのが「それでも歩は寄せてくる」である。

本作の連載自体は週刊少年マガジン2019年4月号から始まったが、実はそのプロトタイプにあたるものは、以前から山本崇一朗の公式Twitterで不定期に連載されていた。当初タイトル無しで2018年4月22日にツイートされていたが、それから第3弾にあたる2018年5月27日のツイートにて「将棋のやつ」という仮タイトルが付けられた。

本作の骨子は将棋部(正式には認められていない)で活動する高校2年生の八乙女うるしと、その後輩であり彼女の事が好きな1年部員の田中歩、両者による将棋のような責めて責められな恋愛模様であり、それはプロトタイプから本誌での連載まで一貫している。

基本的に主人公とヒロインの2人をメインに描くというフォーマットは、「高木さん」と共通しているが細かい所では差別化されている部分も多い。例えば、「高木さん」では西片と高木さんのパワーバランスは圧倒的に彼女の方が高めにされているが、本作では比較的歩の方が強いとは言え、うるしの方が上になるパターンも珍しくない。作品に将棋の要素が入っている手前、歩とうるしの差はなるべく小さく、どちらも有利に転じられるような関係にしている傾向が見られる。

更に本作では、うるしと歩の関係が進展するのを明確にしているのも「高木さん」とは大きく違う部分である。「高木さん」の場合、西片と高木さんの関係が表面上変わらないものとして物語が進んでいく。高木さんは西片への恋愛感情を直接出す事は殆ど無いし、西片もまた、高木さんへの気持ちをはっきりと自覚している訳ではない。

しかし、歩は西片と違い自身の恋愛感情をしっかり認識していて、うるしに対局で勝ったら告白するという目的がある。うるしも歩に対しては満更でもなさそうだが、彼がひた隠している自分への恋心を認めさせようと、時に彼の「攻め」に対抗しようとする。双方が恋愛に主体的であるという意味では、ある意味「高木さん」よりラブコメらしいと言える。

ちなみに単行本では、本編でうるしと歩が指した対局の棋譜が収録されている。これは株式会社ねこまどの代表取締役、北尾まどかによる監修協力の元に作成されたものである。本編の内容に直接関係しているものではないが、より劇中の奥行きを拡げるための施策として評価出来る。既に将棋を嗜んでいたり、本作をきっかけに将棋をやってみたいと考えている読者には垂涎の特典である。

将棋とラブコメの要素を組み合わせた本作「それでも歩は寄せてくる」、山本崇一朗が新たに描くうるしと歩のうらやまけしからんな対局に注目である。

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