ゆずソフトの最新作「喫茶ステラと死神の蝶」の発売迄、あと1ヶ月を切ろうとしている最中、このようなニュースが飛び込んできた。
今回の件に対する筆者の意見を述べたいと思う。先に言っておくと、ゆずソフトと 「パティシエ・エス・コヤマ」のどちらかが善いか悪いかの問題ではないと思っている。双方がそれぞれ目指す利益追求への道筋が、不幸にもバッティングしてしまった事故のようなものである。
まず、店側の主張について注目してみたい。
店側はイメージが損なわれかねないとして発売後の抗議を検討している。
アダルトゲームが人気洋菓子店「エス・コヤマ」外観を無断使用-神戸新聞NEXTより引用
店側は「年齢制限があるゲームの性質上、客に不快感を与えかねない」とし、発売後に使用を確認して対応を検討する。
同店広報室は「(制作側に)許可していないということは皆に知ってほしい」とした。
要約すると、「店が勝手にアダルトゲームの舞台に使われたとなると、イメージの低下を招きお客様の迷惑になる恐れがある」という風になる。確かに洋菓子店客層は女性がメインで、エロゲをよく買う成人男性とは相容れなさそうなのは想像に難くない。店の主張自体は其処迄おかしいものとは言えないだろう。
一方、ゆずソフトの言い分としては記事にこのような文章がある。
制作側は著作権に抵触しないよう細部を変えたとしている。
アダルトゲームが人気洋菓子店「エス・コヤマ」外観を無断使用-神戸新聞NEXTより引用
神戸新聞社の取材に、制作側は店の許可を取らずにモデルにしたと認めたが、店のロゴを消して石垣の色も変えるなどしているため「著作権の問題はない」と説明。ゲームやアニメ、漫画で建物を描く際は、所有者や権利者に許可を得ないケースが多いとしている。
情報・メディア法に詳しい関西学院大学大学院司法研究科の丸山敦裕教授(憲法学)は「性的な場面で使えば営業妨害になる可能性もあるが、背景に使うだけなら削除などを求めるのは難しい」と話す。
少なくともこれらの文章に注目してみると、ゆずソフトと店側の主張にはある大きな隔たりがあることが想像出来る。それは、店の「ブランドイメージが損なわれる」という主張に対し、ゆずソフトの「店の建物の著作権は侵害していない」は些か論点がずれているのである。店が最終的に危惧していることは、「自分達の店のブランドイメージの低下」であり、「勝手に建物の外観や内部を創作物に利用された」ことではないのである。だからゆずソフトが、店側の建物の著作権を実際に侵害しているかどうかは、本来の争点ではないのである。
だから、ゆずソフトは本来店側に対し許可を取るように事前にアポイントメントを取るべきだったのかもしれない。そうすれば実際に使用出来るかの是非は兎も角、今回のような事態には陥らなかった可能性はあった筈である。
店側は「年齢制限があるゲームの性質上、客に不快感を与えかねない」とし、発売後に使用を確認して対応を検討する。同店広報室は「(制作側に)許可していないということは皆に知ってほしい」とした。
アダルトゲームが人気洋菓子店「エス・コヤマ」外観を無断使用-神戸新聞NEXTより引用
これは筆者の憶測の域を出ないが、 発売後に対応を考えるという部分からもしかしたら店側もゆずソフトに譲歩する気持ちはあるのではないかと考えている。事前の話し合いがあれば条件付きでも許可を出してくれた可能性も考えられるだろう。だからこそ、店側は無許可であることを強調している風にも捉えられそうである。
そして、ゆずソフトは今回の件に関する声明を以下のように発表した。
お知らせ
一部新聞報道につきまして。-ゆずソフトより引用
一部新聞報道等にございました、弊社新作『喫茶ステラと死神の蝶』に実在店舗の外観を参考に使用させて頂いている件につきまして、
製品内より該当箇所の背景画像をすべて差し替える対応をさせて頂くこととなりました。
参考にさせて頂くにあたり、実際の店舗のデザインとは要所の変更を行い、配慮をさせて頂いておりましたが、
店舗様にはご迷惑をお掛けする結果となり深くお詫び申し上げます。
なお、現時点で差し替え作業による発売日の変更等はございません。
以上、よろしくお願いいたします。
2019年11月 株式会社ユノス
今回の件で筆者が感じたことの1つにやはり、エロゲというコンテンツの社会的イメージは良くないものということを再認識させられた。エロゲをやらなかった以前の自分なら、そもそもこのような事件には見向きすらしなかっただろう。しかし、今の自分ではやはりエロゲの制作サイドに肩入れしてしまう部分があるのは否定出来ない。とは言え、エロゲに限らず成人向けコンテンツというものは、これからも世間の風当たりの強いものとして在り続けるだろうし、そういうものだからこそ生まれる面白さもあると、筆者は信じている。
いずれにせよ、このまま自体が善い方向で収束していくことを我々は待つのみである。起こってしまったことはもう変えられない。ゆずソフトには最新作を無事に発売出来るよう最後の調整を頑張ってもらいたいし、次回作では今回のようなことが無いように、細心の注意をもって制作に励んでもらえたらいいと思っている。だから、店側にも非があるとか、ゆずソフトはおしまいとか、そんな妄言は早く消えて欲しいものである。
ちなみに筆者は既に 「喫茶ステラと死神の蝶」 を公式通販で予約済みである。2019年12月20日、その日が我々にとって素晴らしい日になることを祈っている。