こころには笑顔でいて欲しいから・・・。(アマツツミ こころルート感想 その2)

 今回はこころルートの7~10について記述する。

こころ 7
 前日での出来事をほたるに相談する誠。最初は外の世界を謳歌するために里を飛び出してきたものの、喫茶店折り紙に住んでいるうちに其処を自分の帰る場所、「家族」が居る場所として意識するようになってしまったのである。それが自分にとって良い事なのか悩んでいた誠だが、ほたるとのやり取りを通じて自分の答えは既に出ていたことを気付かされる。
 こころとの散歩の後に折り紙が閉まっていることに気付いた誠達。依然として体調の良くないあずきさんに対して、誠は自分が何も出来ないことに悔しさを覚える。誠は自分が代わりに店を開けようかと思案するものの、結局それを諦め代わりにこころと夕食の買い物のついでに、あずきさんの好物のケーキを買うことにするのである。この時、誠がこころと交わしたやり取りには、誠が彼らの家族として生きる決意のようなものが垣間見えいいた。

こころ 8
 例の如く言霊であずきさんを休ませようとする誠。結局、午前中で店を閉めることにし時間の余裕が出来た誠は取り敢えずほたるに電話するのだが、どうも様子がおかしいのでほたるを助けようと学校に向かう。ほたるを見つけ、今度は誠が彼女の愚痴を聞くがその内容がよく呑み込めない。おそらく本編を一回クリアすると、この時ほたるが言っていた意味がより理解しやすくなるだろう。事態は静かに深く進行していたのである。それでも誠が言った「僕もほたるも1つの命だ」という言葉に、ほたるは幾分か救われたのか誠に自分を抱いて欲しいと乞う。教室での逢瀬の後に、元気を取り戻したほたるだったがまたもや誠に意味深な一言を言う。しかし、そこでこころから緊急の電話がかかってきたのだった。
 病院に駆けつけてみるとそこで暢気な会話を繰り広げるあずきさんと牛のように怒るこころ。事故に遭ったものの大した怪我ではないものの、一応の入院ということで安心する誠とこころだったが、入院した本当の理由をあずきさんは誠だけに打ち明けたのである。あずきさんの命が尽きかけている事実にショックを隠し切れない誠。その思いは言霊として発現してしまうほどに溢れていた。そして自分が死んだあと、こころと2人で自由に生きるようにと誠に伝えるあずきさんの言葉はまさに母が実の息子に言うそれだった。しかし、誠はどうしても自分が本当の息子ではないということを言えず、ただ目の前に横たわる事実にどうしようもないやるせなさを感じていた。
 病院の待合室で、こころが戻ってくる前に落ち着きを取り戻そうとする誠だが、聞こえる全ての音が耳障りに聞こえその鬱屈した思いが言霊になってしまう。誠がふと気付くとそこにはほたるがいた。「自分なら言霊を受け止められる、だから全部出して欲しい」、誠を気遣うほたる。そして誠は思い出す、あの日にほたると交わした約束を。それは確実に誠の中に根付き始めていた。病院に戻ってきたこころは誠の腕の中で泣いていた。優しく抱きしめる誠だがその胸中では、この状況でも涙を流さない自分が人間ではないようだという思いが渦巻いていたのである。

こころ 9
 その日、誠がそれまでの人生で一番言霊を酷使したことにより、彼の肉体は大きなダメージを受けていた。翌日、それは頭痛や吐き気となって誠に襲いかかるが、それすらも言霊によって感覚をシャットアウトしてしまう。誠にとってあずきさんと過ごせる日が僅かなことが分かっている以上、多少の無理をしてでも彼女のお見舞いに行くことを決めていたのである。学園を休みお見舞いに向かう誠とこころ。こころにとって今年の夏がいつもと違うのは誠がいるお陰である。誠が居るからこそ、今まで一人で過ごしていた寂しさを和らげることが出来ていた。
 病院で会話を楽しむこころとあずきさんだが、誠はそれに積極的に加わることは出来なかった。あずきさんの病状をこころに隠している手前、迂闊なことを言うことが出来なかったからである。話がアルバムのことに移ったとき、こころは誠が写ったアルバムが何処にあるかを聞いてきた。勿論、そんなアルバムは無いにも関わらず家に行って探してくるように頼むあずきさんに誠は驚く。再び病室であずきさんと二人きりになった誠は問いかける。やはり誠があずきさんにかけた言霊はその効力を失っていたのである。動揺する誠に対してあずきさんは決して怒らず寧ろ彼の頭を撫でた。誠の「外の世界で暮らしたい」という思いを信じ、彼を改めて家族として受け入れたのである。誠はもう一度あずきさんに言霊をかける。しかし、おそらくそれに込められた思いは前とは違い暖かくもっと純粋なものであると筆者は思う。
 家に帰る前に湖に寄る誠とこころ。湖を見つめるこころの表情は何処か憂いを帯びていて、それが逆に誠に印象を残していた。誠が来てから自分が甘えん坊になってしまっていまい、精神的に弱いのは良くないと言うこころ。誠は勿論筆者でさえも、自分をしっかり者と称するこころに苦笑せざるを得なかった。そんなこころに今のままでいいと励ます誠だったが、こころの返事は予期せぬものだった。こころはあずきさんの嘘に気付いていたのである。本当のことを告げるべきか迷う誠だが、結局こころに真実を告げた。言霊で誤魔化すことだって出来た筈だが、誠はそれをしなかった。あずきさんとの約束を破ってしまうことよりも、こころの気持ちを尊重出来ないことの方が兄として、彼女を愛する1人の男として許せなかったのだろう。
 それから折り紙に戻り、約束通り放課後の時間に店をほたるが訪れる。学園でほたるを抱いた折りもあり、一応声を掛ける誠だがやはりそのことに触れるのは無駄のようだった。こころも2階から降りてきて、あずきさんの容体や学園のことについての話が交わされたあと、誠はあずきさんに続きほたるにも顔色が悪いことを指摘されてしまう。ほたるとこころが店を出て一旦1人になった誠は自分にかけた言霊を解除する。たちどころに誠に襲い掛かる吐き気や頭痛、しかもその酷さは朝に感じたそれを遥かに上回るものだったのである。体調の悪さをこころに知られる訳にもいかず、今度はこころ1人に見舞いに行かせ誠は部屋で休むことに。やがて聞いたことのある「声」によって突如目を覚ます誠。夢か現か、其処に居るのは恋塚愛。声を掛けようとする誠だが、それは言葉にはならず再び愛の「声」によって眠りへ落ちてゆくのだった・・・・。


こころ 10
 こころの声で目を覚ました誠。半日以上眠っていたらしく、まるで死んでいるかのような深い眠りだったのである。それでも心なしか身体の調子は回復したようだ。その日は2人共に口数の少ない登校だった。あずきさんのことの考えてしまい、何か話をしようとしても結局あずきさんの話題になってしまうかもしれないからである。校門で誠と別れる前に笑顔を作るこころに筆者は悲しみを感じずにはいられなかった。
 久しぶりに登校した誠は光一や響子と会話を交わし、幾分か気分転換になったようではある。しかし、授業中でも誠はどうすればあずきさんを救えるのか、その事に頭を悩ませていた。それでも誠の気持ち自体が前向きでいられたのも、ほたるとの約束のお陰なのだろう。誠の思考はあくまで光を頼りに迷っていた。中休みに図書準備室で誠は響子に助言を求める。あずきさんをどうにか言霊で救いたい誠にとって、愛以外で特別な力を持つような人間に一番近いのはやはり響子しかいなかったからである。そして、誠は光明を見出す、人の生き死に関する言霊を使うことであずきさんを救うことが出来るのでは、と。
 授業が始まったにも関わらず、誠は学園内の礼拝堂でじっと考えていた。あずきさんを言霊で救った場合、自分が死ぬかもしれないこと。言霊の力の源泉は使用者の命。強力な言霊を使えば使うほど、その命を消費すること。そして、誠は里を飛び出してからの今までの生活を思い返していた。響子に言われたように自分が自然と笑えるようになっていることや、外の世界の生活に慣れてきたことなど、誠にとってその日々はとても充実したものだったのである。もう誠に迷いはなかった。あずきさんを救うために、自分のやりたい事をするために、今一度人から神に戻ることを誠は決心したのである。
 学園を早退しひとまず眠りにつく誠。今度は長い眠りになることはなく、夕方に自然と目を覚ますことが出来たのである。そこで誠は、部屋の中にこころが居ることに気付いたのである。こころの、あずきさんが死んでしまうことへの不安は愈々大きくなっていた。今のこころに必要なのは人の温もりである、そう考えた誠はこころを抱き寄せる。それは誠自身も欲しているものでもあった。おそらく最後になるであろう抱擁、誠はその分だけこころを抱きしめる。そして誠はこころに言う、「こころの願いは自分が叶える」と。こころはその時、誠が何かをしようとしている事に気付いた。具体的なことは分からないものの、それをした結果がどういう事になるかだけは、こころにも想像がついていたのである。「兄さんまで失いたくない、いなくならないことを約束してほしい」、そう誠に願うこころ。誠は嘘を付くことになると分かっていて、肯定しようとしたが上手く言葉にならなかった。こころが誠を見つめる目は、とても綺麗で嘘を付くことをためらわせるような、そんな瞳だったのである。今更引き返す訳にいかないがこれ以上こころに心配をさせたくない、そんな誠の必死な思いが思わず言霊になってしまったのだろう。誠が言った「これ以上心配しなくていい」が言霊として発動してしまい、それはこころが隠していた本心をどうしようもないほどに剥き出しにしてしまったのである。
 突然、誠を押し倒すこころ。こころは誠に対する思いを素直に口にして、自分を抱いて欲しいとせがむ。誠もその思いを一心に受け止め、2人はついに兄妹の一線を越えたのである。事後、誠は眠るこころに別れを告げ、浴衣に着替えると病院へ向かう。全てを誠が来る前の状態に戻そうとするように。
 あずきさんの手を握り言霊を発する誠。言霊の強さはその思いの強さ。誠が発する言霊には、外の世界に飛び出して良かったことやこころやあずきさんを始め色んな人に出会えたことなど、様々な思いが込められていた。そして最後の言霊に全てを込めてあずきさんに命を与えたのである。後に湖を訪れた誠だが、その身体から命の火が消えかけながらもまだ僅かな生を保っていた。誠の中で響き続ける「行きなさい」という言霊、それが辛うじて誠をこの世に引き留めていたのである。身体の力を失い倒れる誠の側には再び愛が。やはり愛は本物の存在であり、前に現れた時も誠に言霊で命を与えていたのである。薄れゆく意識の中で誠に残った1つの疑問、何故自分は言霊の本質を知らされなかったのか。その答えを知るために愛の言霊に導かれ、昔を思い出す誠。実は病に罹っていたのは父親と・・・・・誠自身だったのである。そして誠に言霊で命を与えたのが誠の母親だった。「生きなさい」、母が発したその言霊が今日まで誠を生かしていたのである。だが真実を知っても誠は己を馬鹿だとは思わなかった。母から貰った命を母に返しただけ、誠にとってはそれだけで充分だったのである。そんな誠に愛は問い掛ける、「あなたは里を出て何を見つけられたのか」。誠は愛に向かって改めて笑いかける。それが答えそのものだった。

 本当は2018年5月4日の時点でこころ 12の分まで書いていて、そこまで一気にまとめようとしたが如何せん分量が多くなってしまいやむを得ず、こころ 10までで一旦筆を止める事にした次第である。それだけアマツツミには物語としての厚みが充分にある証拠だと筆者は考えている。もっと詳しく書こうと思えば出来なくもないが、実際にプレイする時の楽しみを損ないたくないために、これでも削ったつもりではある。そもそも感想になっているかどうかすら自分でも疑わしいが、それは読者に判断して貰うしかないだろう。それでも筆者の記事を読んで何かしらの共感や反対意見を持ってもらえれば幸いである。

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