織部こころは可愛い。(アマツツミ こころルート感想 その1)

 こころルートを終えた直後に筆者は思った。「どうせならこのルートを最後にやれば良かった」、そう思わせる位にとてもきれいな清々しい読後感が残る終わり方だったのである。
 この記事ではアマツツミのこころルート1~6の感想を書いていく。ちなみにアマツツミは全てのルートに通し番号がふられていて、こころルートは本編と派生を合わせて1~19まである。

こころ 1
 誠のこころやあずきさんとのファーストコンタクト、そして誠が里を飛び出す直前の回想などが描かれている。誠とこころの出会い方が色々な意味で印象的である。ちなみにこのチャプターでのこころは、至って普通の女の子に見えるが物語が進むにつれて彼女の特異性?が分かるようになる。ただ、倒れていたとはいえ見知らぬ人間を家まで連れてきて、挙句住む場所を何とかしてあげようとする時点で、こころが世間一般の女の子とは違うのは言うまでもないだろう。それはこころの母親であるあずきさんにも同じことが言える。だが、彼女たちと誠の会話の中で改めて誠がある意味で一番、普通と違うことをユーザーは理解出来るだろう。
 愛はこのチャプター内での回想で既に登場する。そこで誠と愛がまぐわう様子が描かれるが、それが誠が里を飛び出すことを決心させるきっかけになるのである。そのまぐわいはいつものそれとは少し違う意味を帯びていて、里に飛び出すことを考えている誠を止めたい、自分と一緒にいて欲しいと願う愛の切ない願いが反映されたものだったのである。だが誠はそんな愛の健気な願いに気付きながらも、だからこそ里を飛び出す決意を固める。そんなことを愛にさせてしまった自分に、今まで抱えていたその気持ちに決断出来なかった己を許せなかったからである。

 実はこのチャプターで誠はこころと愛に同じ事を指摘される。それは顔の表情が乏しい事である。誠自身もそれを気にしており、外の世界で人々と「コミュニケーション」をする事で自分も自然と笑ったり怒ったり出来るようになりたいと願っているのである。


こころ 2
 響子やほたるの初登場回だが、響子に関してはこの時点では顔見せ程度のレベルである。それに反してほたるは最初からその独特な雰囲気をまとって登場し、言霊が効かない人間として劇中でその存在を知らしめるのである。
 この回で筆者が印象に残っている場面がある。誠とこころが携帯電話の試用をして楽しんでいる時に、通りすがりの若い男がこころにぶつかるも謝らないその態度に怒った誠が、その男に言霊を使う場面である。誠が怒る気持ちは理解出来るのだが、彼が躊躇せずに簡単に言霊を使用するところは少し恐怖を覚えた。外の世界に来て間もない手前、本来ならもっと言霊を使う時や場所を選んでもおかしくはないのだが、誠はそこまで気にしていないようである。ここら辺にまだ誠が自分を言霊使いとして何とでもなるというような自信と無計画に言霊を使ってしまう危なっかしさが見え隠れしていると、筆者は思わずにはいられない。また、誠は折り紙での初バイトでも言霊を使う。こころとあずきさんへの恩返しとしての行動だが、ここでも似たようなことが言えるかもしれない。

こころ 3
 誠が言霊でこころとあずきさんの「家族」になり、同時にほたるという「協力者」が出来るという物語が大きく動く回だと言えるだろう。
 誠にとって、こころとあずきさんにその言霊を使うことが最善だと考えた。自分の為というよりは、家族として一緒に暮らす体の方が2人に余計な負担をかけないと判断したからである。この決断が物語の中で何度での誠の前に立ちはだかることになるのを、誠はまだ知らない。特にこころとの関係性を兄妹に固定したことが、誠の中で迷いとなるのである。誠が考えた以上に、こころの精神には既に誠のことが占められていたのである。
 そして、ほたると交わしたやり取りと約束が誠のこれからの行動に大きな影響を及ぼすことになる。言霊という特別な力を持っているが故に待ち受ける葛藤、神様から少しずつ人間へと近づくことによる心の在り様の変化、ほたると交わした約束がこれからの誠が生きる上での新たな指針へとなる重要な回とも言えるのである。

こころ 4
 誠の記念すべき学園生活の初日と響子と過ごす放課後の様子が描かれる回である。誠と一緒に登校するこころは本当に楽しそうであり、既に兄妹というよりカップルの様相を呈している。その様子に半ば呆れるほたるに筆者も共感を抱かざるを得ない。この回でサブキャラの浅川光一も登場し、誠の学園生活にも愈々らしくなってくる。だが、さしずめ誠でさえも授業を受ける苦痛さは我々とさほど変わらないようである。
 この回でようやく響子にもクローズアップされるが、巫女でもある故か誠が普通の人間と違うことを直感的に理解しているようである。しかも霊感が備わっているようであり、そこはある意味言霊という異能の力を誠に近いものがある。しかし、響子の性格も誠とはまた違う方面で屈折しており、そこが面白いというか見ていて飽きないのである。


こころ 5
 冗談を言ってみたりと少しずつ外の世界にも慣れ始めた誠、しかし変わり始めたのは何も誠だけではなかったのである。昼休み、響子とほたるに仲良くなってもらおうとこころも交え4人で過ごす誠には、友人とのお昼はかねてから望んでいたコミュニケーションの1つのようである。主要人物が集まり会話をする様子は筆者にも微笑ましく感じる。昼休みが終わる手前、ほたるは誠に忠告めいたことを告げる。彼女が既にこころの心境の変化に気付いていたのである。
 その日の夜、誠は何時もの様に居間でこころと2人で楽しいお喋りを交わす筈だった。ほたるとの会話を思い出しこころを異性として意識してしまう誠。そして、誰が一番好きなのかと誠に質問するこころ。本当の兄妹ではないのが、敢えて兄として振舞おうとする誠は改めてこころに言霊を使うが、それが仇となってしまったのである。突然、こころからしてきたキスに誠も思わずキスを返してしまう。異性としての関係が発展しないように作った偽りの関係が、逆に2人の恋愛感情を盛り上げ始めていた。

こころ 6
 初めてキスをした誠とこころ。その出来事は誠にとって余程嬉しかったのだろう、自身が気付かぬほどに顔がにやけるほどで光一や響子にも指摘されてしまうほどだったのである。勿論勘のいいほたるにも気づかれてしまい、そのことでいじられてしまう。言霊の通じないほたるに後手後手の対応を取らざるを得ない誠の様子が可笑しくてたまらなかった。そしてその日はほたるにもキスをされてしまうという始末。しかし、誠がほたるのその行動の真の意味に気付くのはまだ先の話である。
 一度唇を重ねたせいか、誠とこころは肉体的接触を増やしていくがこころはどうしても最後の一線を超えることは拒んでいた。その事に少々物足りなさを感じながらも、こころと過ごす毎日充足感を覚える誠。しかし、幸せなことばかりでもなかった。お店でレシピを書いていたあずきさんから、誠はその理由を聞きうろたえてしまうのである。言霊による仮初のものとはいえ、誠はもう「家族」がいる生活に居心地の良さを感じていた。そして、あずきさんにも本当の自分の母親に抱くような情を覚えた誠にとって、あずきさんの体調が以前から良くないという事実は受け入れがたいものだったのである。

 こうして改めてプレイし直しながら感想を書くのも結構楽しいものである。外の世界に慣れてきた一方で、新たな悩みに直面することになる誠がどのように進むのか。そして、こころとの関係は何処に向かうのか。言霊が使えることで出来ない事なんてないと思っていた誠が直面する現実とは。筆者も気持ちを一新にしてアマツツミに向き合う所存である。

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