兄妹を乗り越えて・・・・。(アマツツミ こころルート感想 その3)

この記事で纏めるこころルートの感想は最後である。残りの15~エピローグ迄、一気に書こうと思う。

こころ 15
あずきさんはその後の経過観察の為の検査入院中へ。しかし、こころはその日の愛の早退も含めて、気を揉んでしまう。どうも、愛は色気より漫画っ気しか感じない。

こころ 16
本来は店を閉めてもいい日だったが、誠はこころと2人で営業する。休憩時、誠はこころにより特別メニューをお勧めされて・・・。愛は店の中でも漫画を読んでおり、筆者には彼女の方が誠よりも、余程外の世界を楽しんでいるように見えてしまう。

こころ 17
こころとの甘い兄妹関係が続いていたが、誠は愛にそろそろ結論を出すように諭される。そしてその日の夜に、こころとキスする所を愛に見られてしまう。

こころ 18
誠とこころの、言霊で創られた兄妹としては最後のデートが描かれている。そして、ついにこころにかけられた言霊が解除されるのである。

こころ 19
こころと「他人」になってしまった誠。なかなかこころと話が出来ない状況の中、愈々里に帰ることを決心して・・・。

こころ エピローグ
今日も今日とて、仲良く登校する3兄妹。これまで通り、誠と愛は織部家に居続けることに。ちなみに愛はまだ、誠を諦めていないようである。

こころルートは、誠が再び家族のぬくもりを思い出し、こころとの兄妹関係を脱して本当の恋人になる迄の話である。幼少の頃に流行り病をきっかけに家族を失ってしまった誠は、家族のぬくもりを長い間感じることが出来なかった。それを与えてくれたのは紛れもなく、こころとあずきさんの2人のお陰である。言霊による仮初のものだったとしても、少なくとも誠にとってそれは本当のことで大事なものになっていたのである。だからこそ、自分の命を犠牲にしようとしてまでも、誠はあずきさんを救おうとした。筆者は誠が言霊で家族を作ったことを、一概に責める気にはなれない。結果論でしかないとは言え、それは誠にとって正解だったとも言えるし、そうしなければ誠は今ほど成長出来なかっただろう。

「こころ 15~16」では、こころが誠に対して随分積極的になっている。入浴時の「洗いっこ」や店内での特別メニューによる「おもてなし」と、野郎の浪漫を掻き立てるシチュエーションとも言える。「こころ 18」でも、誠の希望を叶えようと外にも関わらず大胆不敵な行動を起こす程に、彼に首ったけである。

一方で、愛も織部家に加わるようになってから、こころの身内に対する心配症も強まったようである。昼休みに早退した愛(漫画読みたさのサボりにしか見えない)が心配になり、家に帰るなり彼女に抱き着くこころはとてもいじらしい。こころには身体の弱かったあすきさんと今の愛が重なるように見えていたのかもしれない。誠を介抱した時といい、こころは本当に「きれい」な女の子である。

誠を兄として、また同時に1人の異性として慕っていたこころだが、やはり胸の奥底では、兄妹故の恋愛のもどかしさを感じていたのだろう。基本的にキス以上の肉体的接触をなるべく自重していたし、周りの人間に気付かれないようにはしていた。そんな折に、こころが誠にキスされようとしていた場面を、愛に見られてしまったのは何とも不運である。「兄弟は恋仲にはなれない」、愛の言霊がこころに容赦なく叩きつけられる様は、筆者に激しい痛ましいさを感じさせたのである 。

長らくこころにかけた言霊を、解くタイミングを図りかねていた誠。しかし、彼等の兄妹関係は、2人の恋愛を盛り上げるものでありながら、同時に2人の恋愛を阻むものにもなっていた。だが、デートの終わり際にこころが呟いた一言が、誠の背中を強く押すように彼に決意させたのである。「兄妹じゃなければ恋人になれたのにな・・・・」、これを聞いて何も感じなければ男ではない、それほどに誠の心の奥深くに突き刺さった、こころの本心が詰まった一言である。

こころルートにおいて、誠とこころの関係性を盛り上げるうえで、愛の存在は必要不可欠だと言える。2人の、兄妹でありながら恋愛するという関係性にメスを入れながら、時に譲歩したり言霊が解かれた後の2人をフォローしたりと、柔軟な立ち位置で動いているからである。

そもそも愛自身が、織部家に居る内に主に漫画を通して外の世界に馴染んでいったようである。更にあずきさんや、特にこころと姉妹として仲良くなっていく過程は見てて微笑ましい。誠でも今迄知らなかった、愛の新たな一面がこころによって引き出されたのである。そんな彼女が自身のルートで、どのようにして誠と結ばれるのか、気になる所である。

こころは本当に良い娘である。家族を大事にしていて、誰に対しても優しいし良い意味で人との距離感を軽く飛び越えてしまう。こころの笑顔は眩しく、見ているこちらも思わず笑顔になってしまう程である。誠にとって最初に出会った外の世界の人間が、こころなのはとても幸運だったと思う。そして、誠はそんな彼女を通して外の世界を知り、良い事も悪い事も自身が望んだものたちに触れ、成長する事が出来たのだろう。言霊による偽りの関係の中で、お互いの愛情を育み本物にした彼等ならもう心配はないだろう。いつか本当の家族になれる日が来るに違いないと思う。

初稿:2018年5月7日
第2稿:2019年2月19日

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