兄妹を乗り越えて・・・・。(アマツツミ こころルート感想 その5)

 こころルートの感想を纏めた最後の記事である。

こころ 18
 週末、約束していた誠とこころのデートの日。こころは兄と2人っきりで出かけられるのを喜んでいる一方、誠はこころとの間にある見えない壁をもどかしく感じていた。言霊を解除する、それだけの事の筈なのにどうしてもその一歩が踏み出せない誠。とは言え、こころとのデート自体はやはり誠にとっても楽しく、こころとの何でもない会話さえもかけがえのないものである。湖に着き、其処で涼しむ誠とこころ。周りに誰も居ないことを良い事に、恋人同士のコミュニケーションを行う。興奮が高まってきた誠の為に、こころは誠の顔の上に跨りスカートの中を見せる。其処に広がるは誠だけが見る事を許される絶景だった。誠はその風景を夢中になって楽しむ。しかし、雨が降り始め途中のバス停に雨宿りする事に。ずぶ濡れになってしまっている誠とこころ。次のバスが来るまで時間はある・・・、2人はさっきの続きをする為にお互いの身体を温めることに。行為が終わった後、こころは何処か悲しげなことに誠は気付く。バス停の中が何故か気まずい。やがて雨が止み空は明るさを取り戻し始める中で、こころが聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟いた一言が、誠の今まで迷っていた心を大きく揺さぶったのである。
「兄妹じゃなければ恋人になれたのにな・・・・」
もう、誠に迷いは無かった。
 帰り道、誠は改めてこころと向かい合う、兄妹の関係を終わらせる為に。誠は最初の一言を切り出すことが中々出来なかった。こんなにも言葉を出すのをためらってしまうのは、誠にとって初めてのことかもしれなかった。それだけ誠にとって今までの家族として、兄妹としての居心地が良すぎていたのだろう。しかし、それ以上に誠は兄妹であるが故に、それ以上進めない事が辛かった。前に進まなければいけない、覚悟を決めた誠はこころにかけた言霊を解除しようとしたその時に、なんと愛が現れたのである。そして、愛が誠の代わりにこころへの言霊を解除した。こころには、その言葉の意味がよく分からなかった。だが、その言葉は少しずつこころの認識を元に戻していく、元のあるべき形に戻ろうとするように。こころは混乱し始めていた、そしてその目に涙が溢れ零れ落ちていく。誠はそんなこころの様子を見る事がとても辛かった。そして、こころの「私に兄さんはいなかった、の・・・?」の問いかけにやっと一言、「・・・・・そうだよ」とそれだけが誠の返せる答えだった。こころは、その場には居られないとでも言うように走り去ってしまった。いつかこうなる事は分かっていた筈だった、それがいざ現実になるとこんなにも苦しいものなのか、誠はショックを受けていたのだろう。しかし、誠はこのまま立ち尽くす、やわな男ではなかった。誠はこころと話をする為に、彼女を探したがどうにも見つけられない。まるでこころの方が町から居なくなってしまったかのように。粗方探し尽くし、誠は愛と合流する。愛もこころを探していてくれたことを知り、感謝する誠。一度好きになってしまったからだろうか、他の女の子を好きになった誠をそれでも助けようとする愛の献身は心を打つものがあって仕方がない。一先ず家に帰ろうと誠を引っ張る愛。誠はもう少し粘ろうとしたものの、自らが疲労困憊の状態である事を想い知らされ愛の言う通りにしたのである。
 こころは家に戻っていた。しかしその日、誠がこころと再び顔を合わせることは二度と無かったのである。誠は己の行為を今更ながら責めたのである。そして、こころに許してもらえないその時は、愛と共に里に帰る事を覚悟した。

こころ 19
 朝を迎えても誠の気持ちが晴れる事は勿論無かった。朝食時にこころと鉢合わせしたものの、ぎこちない挨拶の後に避けられてしまう誠である。呼び方も「兄さん」から「誠くん」に変わってしまっている。誠は学園の中でもこころに会う事は出来ず、放課後になってやっとほたると一緒に居るこころを見つけるが結局逃げられてしまうのである。家までの道程を力なく歩く誠と、そんな彼に優しく連れ添う愛。気付くとほたるが行先に立っている。愛が気を利かせて2人だけにして、誠はほたるに今までの経緯を説明する。事情は理解して貰えたものの、誠のこころに対するフォローがなっていないと厳しい指摘をする。さらにほたるは何かを考えているようだったが、誠はそれに気付く事無くほたるに応援だけされて再び家路に戻った。
 こころは一旦は家に帰ってきたものの、再び出かけたようである。顔を合わせる機会すら与えらえぬほどに、誠は避けられていると感じていた。あずきさんに促されるまま座り、コーヒーを飲むことになった誠と愛。あずきさんは敢えて誠に事情を聞こうとはしなかった。その理由に「家族だから」という言葉が入っていることが、さらに誠を苦しめる。本当の家族ではないのにあずきさんは今までも誠にその優しさを与えてくれていた、実の息子の様に。多分、今更言霊が切れてしまってもあずきさんは誠を受け入れるのだろう。しかし、こころは・・・。誠は自分が甘えていた事に気付いた。あずきさんがそうしてくれた様にこころも自分を受け入れてくれる・・・、自分のことしか考えていなかったのが誠にとって悔しかったのだろう。あずきさんから出されたコーヒーを、誠はブラックのままで飲む。その苦さをちゃんと味わう為に。
 夜、誠と愛が里に帰る為の段取りを話していた時、ほたるからの電話が鳴る。こころが公園で待っている、それを聞くと誠は公園まで急いで走った。もう誠に迷いはなかったのだろう。公園にはちゃんとこころが待っていた。そして誠は、自分が言霊使いである事やこころを好きになり言霊を解いたことなど全てを打ち明ける。そしてこころを傷つけたことを改めて謝り、誠はその場を去ろうとする。しかし、出来なかった。何故ならこころが誠を引き留めていたから。こころの誠を好きな気持ちは言霊の効力が無くなっても変わらなかった。こころは兄としての誠だけではなく、1人の男として誠を好きになっていた。そこに言霊が関わる余地など全く無かったのである。ずっと家に居て欲しいと誠に懇願するこころ。誠はこころを抱きしめた。里には帰らない、こころの側に居る。言葉で言う必要はないほどに暖かく強く優しいそんな思いがこもった抱擁。誠とこころの間にもう二人を阻む壁は無い。


こころ エピローグ
 誠と愛は里に帰らず折り紙に住み続けている。言霊を解かれたのはこころだけであり、こころも2人と口裏を合わせている。愛は誠だけでなく、こころをからかう事も楽しみの1つになっているようである。しかし、愛はまだ誠を完全に諦めた訳ではないらしい。今日も今日とて相変わらずの学園生活のようだが、遅刻しそうなのか急いでいる3人。誠は愛にからかわれる前に逃げようとわざと走る。最初に追いついたのはこころ。誠とこころは愛が追いつく前にキスをする。それは兄妹からいつか本当の家族になる日への希望で溢れた美しいキスだった。

 感想を書くのはやはり簡単な事ではない。自分にとって何処が面白かったのかを具体的に書くのは結構な集中力を使う。ただ全てを書くのも面白くはない。わざと書くことを省いた場面もある。やはり本編を実際にプレイして貰うのが1番であり、このブログが読者の意欲を刺激する起爆剤となればそれで充分である。
 こころは本当に良い娘である。家族を大事にしていて、誰に対しても優しいし良い意味で人との距離感を軽く飛び越えてしまう。こころの笑顔は眩しく、見ているこちらも思わず笑顔になってしまう程である。誠にとって最初に出会った外の世界の人間がこころなのはとても幸運である。
 こころルートは、誠が再び家族のぬくもりを思い出し、こころとの兄妹関係を脱して本当の恋人になろうとする話である。幼少の頃に流行り病をきっかけに家族を失ってしまった誠は、家族のぬくもりを長い間感じることが出来なかった。それを与えてくれたのは、紛れもなくこころとあずきさんの2人のお陰である。言霊による仮初のものだったとしても、少なくとも誠にとってそれは本当のことで大事なものになっていたのである。だからこそ、自分の命を犠牲にしようとしてまで誠はあずきさんを救おうとした。筆者は誠が言霊で家族を作ったことを、一概に責める気にはなれない。結果論でしかないが、それは誠にとって正解だったとも言えるし、そうしなければ誠は今ほど成長出来なかっただろう。
誠はこころを選んだことで、これまでの兄妹関係でいることに限界を感じ始めた。元々兄妹ではないのだから、言霊を解除すればいい・・・という単純な話にはならないから面白い。それまで積み重ねてきた家族や兄妹の関係が逆にネックになっていくのは、ある種皮肉めいているように筆者は思う。それにしても行倒れの男とそれを拾う女が結ばれるとはなんとドラマティックではないだろうか。
 こころルートの感想は取り敢えずここで一区切りとする。困難を乗り越え、本当の意味で結ばれることが出来た誠とこころなら、きっと何処までも一緒に行ける筈である。

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