その時、彼女の心は音もなく崩れ去った・・・。(アマツツミ 愛ルート感想 前編)

今回の記事は、愛ルートの前半に関する感想を書いていく。

第三話 恋塚愛 -雪- 冷たい夏

愛 1~3
愛は、死別した姉である希との、最後のやり取りを夢見る。この頃、彼女はその夢を里にいた時以上に、見るようになっていた。一方、誠は響子の件の後、愛と一緒にいる時間が増えるようになっていた。

愛 4
愛はその日、誠から誘ったデートを楽しんだ。休日の学校で誠の似顔絵に挑戦したり、公園で響子も交え昼食を食べ、デートの終わりに誠とキスしたりと、愛は上機嫌になっていた。誠も彼女とのデートに満足感を覚え、眠ろうとした時にこころが、彼の部屋に入ってきて・・・。

愛 5
翌日、いつも通りに弁当を作る誠の前に愛が現れる。少しの問答の後に、愛は誠に強力な言霊をかける。それにより誠は、絶え間なく雪がちらつく「愛の世界」に閉じ込められてしまう。

愛 6
誠は外界との接触を図ろうとするが、それが裏目に出てしまい愛の気持ちを、更に逆撫でする結果になってしまう。しかし、愛が強力な言霊をこれ以上使用しないように、誠は彼女のある提案を受け入れる・・・。

愛 7
誠は考えた末に、愛と一緒に里を出る決心をする。夜の学園の中庭で、誠は愛に自分の気持ちを伝える。愛は誠と二度と離れ離れにならないように、彼に言霊をかけたが・・・。

愛 8
誠は愛を救う為に、言霊によって「希と共に」彼女を説得にかかる。

愛 9 (ルート分岐回)
「雪の呪い」から解放された愛は、改めて誠に自分との許嫁関係の是非を問う。それに対して、彼が出した答えは・・・。

アマツツミのヒロインにして唯一誠と同じ世界の住人であり、且つ彼よりも強大な力を持つ女の子、恋塚愛を巡る物語も一筋縄ではいかない展開を孕んでいた。

まず語りたいことは、誠が愛の逆鱗に触れてしまったことである。今迄、誠はそれなりに上手くトラブルを回避してきたが、今回のそれは間違いなく彼自身の失態によるものである。自分の好きな人がデートの後に、他の人間と寝て平気でいられる人間がどれだけいるのだろうか。こころルート以外での、こころとのHシーンは「愛 4」の終盤で展開されるのだが、其処からの愛が怒る場面に繋げるのには、素直に関心してしまった。

その後も、「愛 6」で愛から携帯電話を没収されたりと、誠の失敗は続く。これまでのこころや響子と違って、どちらかと言えば身内寄りの愛が相手だからこそ、誠も今迄より上手く立ち回れなかったのかもしれない。しかし、だからこそ「愛 8」での、吹雪に負けず歩みを止めない場面では、彼の強い意思と行動が引き立っていたと思う。

今迄、愛は「自分たちは外の世界の人間とは異なる存在である」ということを、度々誠に諭してきた。それは「愛 1~3」でも見られた場面である。しかし、彼女もまた、誠のように外の世界を知り其処で暮らす内に、人間らしくなっていったと思っている。特に、愛が誠がこころと寝たことを知り、それに激怒したのはその最たる例ではなかろうか。

「こころ 12」でも、誠とこころが寝たことを愛は知るが、今回ほどはっきり怒りはしなかった。勿論、彼女にも多少の動揺はあったのだろうが、それよりも誠の行動は一時の気紛れであり、時期に神としてのプライドを取り戻すだろうと、考えていたのかもしれない。

しかし、結果的に誠は益々外の世界への執着を強めていき、愛は自分もそうなりつつあることを自覚しつつ、彼が自分から離れていくかもしれないという葛藤も出てきたのだろうか。「愛 1~3」で彼女が度々、誠に外の世界に居続けることの危険性を説いたのも、ある意味彼女自身の為でもあるのだろう。

そして、愛が誠とこころの一件に怒ったのも、里に居た頃には殆ど感じなかった人間関係を、嫌でも意識するようになったからだと思っている。愛と誠の、元々許嫁の関係として成り立っていたものに、こころという揺らぎが生じることは彼女にとって、あってはならないことだからである。それでも、愛がこころに何もしなかったのは、やはり妹としての情愛が強かったからだろうか。

今回、愛を助ける為に誠は言霊で、希の幻を生み出し彼女に語り掛けた訳だが、もしかしたら鈴夏の時のように希も実際にあの場に居たのではないかなと、思ったりしている。特にそれを匂わせる部分はないが、その方が夢があって良いのではないのだろうか。

希の言霊から解放され、許嫁という枠を乗り越えて、真に愛し合う仲になった誠と愛。これから2人がどんな道を歩みことになるのか、未来を決める決断が彼等に迫ろうとしている。

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