「彼女」は一度生き、たった一度だけ死ぬ。(アマツツミ ほたるルート感想 前編)

最終話 水無月ほたる -蛍- 最後の1週間

ほたる 1
夜、ほたるは愛への用事を済ませ、例の病室に向かう・・・。学園ではテストの日が近づいていたが、当の誠と愛は言霊があるので、いつも通りの平和な毎日を過ごしていた。

ほたる 2
テスト当日、誠は結局試験をさぼり学園を歩いていると、なんとほたるに出くわす。それから、湖ではほたるを話す内に誠は自分の本当の気持ちに気付き、彼女に告白する。

ほたる 3
こころが気を利かせてくれたお陰で、誠は再びほたると2人になる機会を得た。そこで彼は、今迄知らなかった「普段のほたる」を知る。

ほたる 4
テストが終わりを告げた次の週の月曜日、誠はもう一度ほたるに告白する為に彼女を湖に呼ぶ。そこで、2人は誰にも知られていない秘密の場所を見つけて・・・。

ほたる 5
恋人同士になった誠とほたるは、一緒に登校しながら互いに理想の恋愛関係を築く為の方策を話し合う。

ほたる 6
翌日、愛にも気付かれるぐらいに誠は、ほたるを抱けることへの期待感に胸をふくらませていた。家に帰りシャワーを浴びて暫くすると、彼女が誠の部屋にやってきた。

ほたる 7
終業式を迎えた金曜日。誠とほたるは、こころと愛の2人を出し抜き湖に向かう。そして、例の花畑で今迄のほたるとの思い出を彼女に語る誠には、ある確信があった。

ほたる 8 (ルート分岐回)
約束の時間通り、例の花畑にやってきた誠。先に来ていたほたるの様子は何処かおかしく、まるで「お別れ」を言いにきたような雰囲気である。その時、彼女の身体が淡く光り始めて・・・。

今回の記事はアマツツミのほたるルート、分岐前迄の感想である。アマツツミの物語を振り返る記事も、遂に佳境を迎えようとしている。

此処で愈々、ほたるに隠された秘密が明らかになる。今迄、誠達の前に居たほたるは、「オリジナルのほたる」によって生み出された(健康体としての)複製だった。そして、「オリジナルのほたる」は誠の持つ言霊を利用して、自分の病を克服しようとしているのである。

「オリジナルのほたる」に関して言うなら、病による死への恐怖で性格が極端に捻じ曲がってしまい、2人のほたるが同一人物に見えないというのが、ほたるの差別化としては自然で上手い理由付けだと思う。実際問題として2020年のコロナウイルス騒ぎで、病気に罹りたくないという理由で一部の人に対する差別が行われるという報道を見ているとよく理解出来る。

自分が助かる為にその他を否定しようとするエゴイズムなそれは、確かに人間の中にあるものであり、「オリジナルのほたる」はそれを象徴するものとして描かれている。担当している声優の小倉結衣の演技も相まって、確かにほたるであってほたるではないような印象を受けてしまうのである。

筆者が「オリジナルのほたる」に対して印象的に残っているのは、彼女が織部こころをほたると同様に「こころん」と呼んでいることである。誠やほたるに対し暴力を体現する言動を吐き出し荒々しく濁った言葉遣いを乱用する彼女から、親友の敬称が出てくるのに意外性を感じた。それは、まさしく彼女が水無月ほたるであることを示す証であり、僅かに残された本来の人間性なのかもしれない。

誠はこれまでの外の世界での暮らしによって、里では得られなかった我々には馴染みの文化やコミュニケーションに触れて、最初の頃よりも人間らしくなってきた。しかし、それらを獲得する為に払った代償は少なくなかった。

度重なる強力な言霊の使用は誠に大きな負担となり、以前のように彼は言霊を自由に使えなくなっていることが、愛によって明らかとなった。言霊使いとしては寧ろ手負いの状態にある誠が、「オリジナルのほたる」にどのように対峙するのか、それは物語の最後を迎えるに辺り重要な部分となる。

此処では遂に、誠が真正面から描かれるGGシーンが使われる。2人のほたるにそれぞれ相対する場面で、誠の驚愕或いは怒りの表情が描かれている。エロゲで主人公の顔が明確に描かれることは少なく、それだけに彼の感情の揺れ動きがより明確に表現されている。

誠は「オリジナルのほたる」に会い、人間の持つ負の側面を目の当たりにした。それは彼の心により大きな影響を与え、1つの選択をさせることになる。ほたるを救う為に誠が選ぶ道は、1つの旅の終わりへと結実する。

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